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鼻腔に残る甘ったるい匂いに引きずられながら重い瞼を上げる
ドット絵のように荒い思考が、見慣れない景色で鮮明になった
どこや、ここ…
頬に感じるのは冷たいコンクリートの床、それを照らすのは今にも消えそうな蛍光灯
狭い部屋には何の家具もなく、唯一の窓はカーテンで隠されていた
腕は体の後ろできつく縛られ、両足は結束バンドによって揃えられている
意識を失う直前の記憶、床に転がされたこの状況。思い当たることは1つ
｢迂闊に、アジトなんか近付くんやなかった…｣
耳にインカムの感触はなくて、助けを呼ぶ方法も思いつかない
そもそも俺はどれぐらい気絶してたんや
なんとか外の様子を見ようと窓にずりずりと這って行く
しかし、あと少しという所でドアの鍵が回った
｢あれ、起きてるぜこいつ｣
｢ちょうどいいんじゃねぇの？｣
｢…なんや、お前ら｣
｢知ってんだろ？わざわざアジト周りをうろつきやがって。幹部のロボロ様？｣
｢っ…！｣
ヤバい、バレてる
｢お前ら、幹部に手出してタダで済むと思てんか｣
｢うわ〜怖〜。そんな心配しなくても、今日中にここは引き払うさ｣
下品で頭の悪そうな笑い方
愉快そうに俺の体を無理矢理起こし、ポケットから小瓶を取り出した
｢さて、お薬の時間ですよ〜ロボロくーん｣
｢なんやっ、それっ！｣
｢遠い東の国で開発された新薬だよ。記憶が10年分消えるっつー便利な代物さ｣
｢ロボロくんは2つでいいかな〜？｣
ゲラゲラと笑う声に、目の前の液体がゆらゆらと揺れる
その波はどんどんと、俺を恐怖へ沈めた
｢待、てや。そんなことするより、人質にしといた方が…｣
｢頭のいいお前なら俺らを出し抜くなんて簡単だろ？俺らはまだ死にたくねぇんだよ｣
｢安心しろって。お子ちゃまに戻ったお前を可愛がってくれる物好きなおば様が見つかるさ｣
キュポン、と栓の抜ける音が何も無い部屋に鳴り響く
嫌や。いやや、いやや
アイツらに出会って、戦って、喧嘩して、バカやって、一緒に笑ったあの時間を消される
いくら心無いとか言われたって
アイツらを、Aを、残して行くなんて
皆が、消えるなんて
｢絶っ対、嫌や…！｣
1人が頭を固定し、もう1人が小瓶を傾ける
気絶の余韻で抵抗もできない
この部屋には希望すら、ありやしないのか
絶望がとぷん、と音を立てた
ごめん、お前ら
その時だ。
締め切られたはずの窓
それを覆うカーテンが、ふわりと揺れたのは。
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亀丸(プロフ) - この小説に惚れて貴方様の前作も見てきました…テンポがよく一晩で読み切ってしまうほど面白かったです。今作はハッカーの話ということでこれまたダークな感じが見え隠れしていてとても楽しいです。今後の活動も応援しております (2019年11月7日 23時) (
レス) id: 072776d0d0 (このIDを非表示/違反報告)
カオル - 性癖ドストライク (2019年11月7日 0時) (レス) id: 251e5ea021 (このIDを非表示/違反報告)
遊 - めっちゃすきです！！いやもうこの小説に出たいくらい！！！(何言ってんだこいつ)もう、いや、もう！ほんとすきです！これからも頑張ってください！！！！ (2019年11月6日 22時) (レス) id: 49b5a0c72b (このIDを非表示/違反報告)
ゴミ箱には夢と希望が詰まってる。 - wrwrdさんの話を漁っていて面白そうだなーと思い見ました。そしたら、おぉーすげぇとなり。メンバーの紹介文で笑いました。面白くてすきです。最新頑張ってください。 (2019年11月6日 20時) (レス) id: 569861b1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レック | 作成日時：2019年11月4日 18時
