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何が総統、何がフューラー、何が「守られていろ」だ
守られたのは、自分の方じゃないか
わかっていたはずなのに、女の方の警戒を怠った
間違いなく俺は刺されていた。Aがいなければ
「A!!」
総統と部下という立場など関係なく、愛する女の身を呈して守られた体がただ憎かった
「あ゛あ゛あああああ゛ああああ!!!!!!」
ゾムの叫び声がこだまする
目にも止まらぬスピードで動き回る奴の周りは鮮血で彩られ、裏をかこうとする者は無慈悲な狙撃によって葬られた
俺のせいか。
この滴り落ちる血も、腕に倒れ込んでくるAも、ゾムの叫び声も
俺がゾムに口止めしなければ、あの女を警戒していれば
『グ、ルッペン、様…』
無意味な後悔はAの小さな声によって遮られる
刺されながら片手で発砲したせいで、腕が外れてしまっている姿で
『ごめんなさい、嘘を、つかせて、しまっていて…』
「…気付いていたのか」
『ゾムさん、とか、オスマンさんもトントンさんも、様子、変だった、し』
「…ああ、あいつらは知っていた。俺が口止めしていたんだ」
『ごめっ、んなさ、い…私の、は、ぐっ…』
「もういい、喋るな!」
どんどん青ざめていくAは喋るのも辛そうだ
揺らすのを最小限に抑え、俺はAを抱きかかえた。
死なせるわけには、いかない。
「すぐにペ神に診せる!ちょっと我慢せえや…!」
訛りがでるのは焦っている証拠だ
以前オスマンにそう指摘されたが、今はそんなことも気にかけていられない。
『薄々、わかってたんです、…お姉ちゃんは…』
死んでるって
その言葉も事実も、Aに突きつけるには酷過ぎた。だから俺たちは、隠す道を選んだ。
ゾムがAにした報告は嘘ではない。ただ、俺が受けた報告には続きがあった
「解放されてるか、結婚して消息が掴まれへんだけか…もう、殺されてるか。正直、俺はこの可能性が1番高いと思っとる…」
大先生、ロボロが何の情報も掴めず、ゾムが赴いても見つからない。
だが確証はない、そう結論付けて、俺はゾムに口止めをした。
オスマンに問い詰められ、その場にいたトントンにも真実を話した。隠し事はしたくないとゾムは言い、オスマンとトントンも伝えるべきだと言ったが、姉はAにとって唯一の家族なのだ。足繁くケーキ屋に通っていた俺は、誰よりもその事を理解しているつもりだった。
だからこそ、確実な情報が入るまで、Aを傷付けたくなかった。
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まち(プロフ) - 初めまして、1話したのかと目から読ませていただき、完結までお疲れ様でした。とても素敵な作品に出逢えたこと、心から嬉しく思います。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年7月30日 3時) (レス) id: 9b1209b0b8 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - こんにちは!あまりの面白さに思わず一気読みしてしまうほどでした!!!!!!!こんなに幸せで素敵なお話を読めてとても嬉しいです!ありがとうございます! (2020年3月11日 14時) (レス) id: c0349a147b (このIDを非表示/違反報告)
カラ - とても面白かったです。久しぶりに夢中になって読みました。素敵な作品をありがとうございます! (2020年2月5日 20時) (レス) id: 4407d2bed4 (このIDを非表示/違反報告)
1 - あれ?HappyENDって、こんなに泣けるもんだったっけ? って、半泣きで最後まで読ませて頂きました。とても良い作品でした。 (2020年1月11日 17時) (レス) id: 3bc86cc6f5 (このIDを非表示/違反報告)
レック(プロフ) - すみれいんさん» 度々感想の方お聞かせ頂きありがとうございます!何度も楽しんでいただけているようで本当に嬉しいです。先の展開を知らないと気付かない伏線もたくさんはっておりますので、是非また、新しい笑顔をお見せいただけたらなぁと思います。 (2020年1月9日 9時) (レス) id: a402dc079e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レック | 作成日時:2019年9月13日 0時