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幹部7日目

「おはようございますAさん」
『おはようございますエーミールさん、今日はよろしくお願いします』

訪れたのは訓練場でも図書室でもない。軍事基地に併設されている講義室だ。エーミールさんは普段ここの教授をしており、今日は特別に私の為に講義をしてくれる。連日の訓練で体が疲れている時期にエーミールさんの順番が回ってきたのは有難かった

「Aさんは学校には行かれていましたか?」
『二部までは通っていたんですが、お店のことがあったのでそれ以降は…』

この国の教育機関は一部から五部で編成される。基本学費はかからないが五部ともなれば一般庶民には関わりのない専門知識ばかりで、大抵の人はそこまで通わない。二部までだと読み書きとある程度の計算、政治についてのふわっとした教養しかないが両親を早くに亡くした私は食べていくために働くことを選んだ

「二部を卒業してるなら勉強に支障はありませんよ。私が教えるのはこの国の情勢と軍の基礎知識だけですから。それにAさんは普段から読書をされているおかげでそれなりの知識と教養はお持ちですしね」

ニッコリ笑ったエーミールさんは教本を開きゆったりと講義を開始する。新しく知る知識に好奇心をくすぐられ、話の途中で質問をしてしまってもエーミールさんは嫌な顔一つせずむしろ楽しげに答えてくれた

窓から差し込む日差しと木々に住む鳥たちのさえずり、遠くから聞こえる訓練の声、静かな教室に響くエーミールさんのゆっくりわかりやすい解説
しかし知識という刺激は私の眠気を振り払い、あっという間にお昼前まで時間を進めた


「ふぅ、今日はこれくらいにしておきましょうか」
『ありがとうございました…!とっても面白かったです!』
「Aさんは優秀な生徒さんだ。私も教える甲斐がありますよ。」
『エーミールさんのお話がわかりやすいんです!』
「ふふ、嬉しいですね。そろそろ食堂に行きましょうか。訓練よりはお腹が減らないかもしれませんが、頭は栄養を欲してるはずですよ」
『はい!』


2人で並んで食堂まで歩く途中で、ふと思いついたことを聞いてみる

『エーミールさん、聞いてもいいですか?』
「なんですか?」
『大先生って、なんで遊撃担当辞めちゃったんですか?』


その瞬間ピタッと彼の足が止まった


「……後輩への優しさと、贖罪、ですかね」


他の人には言わないでくださいね、とほろ苦く笑うエーミールさんは、なんだか悲しそうだった

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フェルト - 伏線回収が神!うらつくで稀に見るほんとうの鬼才のお方ですね!最高です! (2019年9月14日 10時) (レス) id: 00cb91440a (このIDを非表示/違反報告)
RaZu@らず(プロフ) - 伏線回収が…!ありがとうございます、わかりやすいです…これからも更新楽しみに待っております! (2019年9月6日 19時) (レス) id: a4ef94e121 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの子(プロフ) - 前作からの伏線がどんどん回収されてくのドキドキします…これからも更新楽しみにしております。 (2019年8月31日 7時) (レス) id: 54ffec1f7f (このIDを非表示/違反報告)
RaZu@らず(プロフ) - 嫉妬する総統さまが…!!!最高です……!!!!!!ありがとうございます…!!!!!!!!!!!! (2019年8月27日 15時) (レス) id: a4ef94e121 (このIDを非表示/違反報告)
琉兎(プロフ) - 主ちゃん可愛すぎっ!惚れてまう!!続きが気になるんじゃぁ!!!更新頑張って下さい、楽しみにしてます!! (2019年8月24日 17時) (レス) id: 3584f7d8aa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レック | 作成日時:2019年8月18日 3時

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