西侍の短編集【Part2】 (ページ26)

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何も言わない神ちゃんに少しイラッとして、
少し乱暴に頭を押さえて唇を重ねる。

「…？！んｯ、シゲっ、！」

「っはぁ、神ちゃん…っ！」

神ちゃんの頭を押さえて、両膝のすぐそこに、自分の膝を置く。
また、逃げられないようにって、必死になって飛びついて。

暫くして、ほろりと神ちゃんの目から涙がこぼれ落ちた。

それからはもう、何をする気にもなれなくて、
お互いが息を呑むのをぼうっと眺めていた。

　

「…ごめん」

「ぅん、まぁ、その、好きになるのはあかんことではないっていうか、でも、
無理やりちゅーすんのは、男同士とか関係なく、違うかなって、…ぉもいます、」

綺麗な服をプレゼントしたって、

バカ高い飯を奢ったって、

「好き」って、言ったって。

どーせ神ちゃんは振り向かへん。

家に帰って、
ふと、壁に貼ってあるマスキングテープを撫でる。

神ちゃんを初めて家に呼んだ時、
「シゲと俺はそないに身長変わらんから！」って言い張るもんやから、マスキングテープとティッシュの箱で背比べをした後。

「……なん、で、…」

神ちゃんの、幼なじみに生まれたかった。

神ちゃんの、好きな人になりたかった。

神ちゃんの、彼氏になりたかった。