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羽鳥は小学六年生になった。
あれからコンプレックスだった胸はさらに大きく育ち、臀部や太ももにもむっちりと肉がついた。どれだけ食事を減らしても、勝手に脂肪はついていった。
その頃、父親の会社が倒産し無職になった。専業主婦だった母親はパートに出かけるようになり、学校に行けていない羽鳥は父親と二人きりで過ごす日々が増えた。
羽鳥はあまり、部屋から出ない。外に出るのが少しだけ、怖かったからだ。
その日も部屋の中、布団にくるまって本を読んでいた。性に関しての本だ。羽鳥は、誰か、少しでも、羽鳥の他人とは違う体を肯定して欲しかった。
すると、コンコンコンとノックが三回。続いてドアが開いて、父親が入ってくる。「どうしたの?」と布団から出た羽鳥は、父親の様子がどこかおかしいことに気づいた。
普段羽鳥を見下ろす、慈愛に満ちた眼差しは無い。ふー、ふーと荒い息を吐き、白目を血走らせて、父親は羽鳥の名前を呼ぶ。
「A……」
「パパ、どうしたの? 具合が悪いの?」
その尋常じゃない様子に慌てた羽鳥は、ベッドを降りて父親に駆け寄った。体に触れると、不自然に熱を持っているような気がした。
熱が出ちゃったんだ。風邪をひいてしまったのかもしれない。
羽鳥は母親に連絡を取ろうと、ベッドサイドに置いた携帯を手に取った。その手を後ろから、大きくて分厚い手が包み込む。
「パパ……?」
羽鳥の小さな声は、父親の唇の奥に消えた。
それが羽鳥の、はじめてだった。
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綾鷹(プロフ) - どハマり中の作品!更新頑張ってください!!応援してます!!! (2021年8月17日 12時) (レス) id: 1e5c1477e1 (このIDを非表示/違反報告)
おかかのおにぎり(プロフ) - 初コメ失礼致します。すごく素敵な作品に出会えて大感激です…!三ツ谷のかっこよさと可愛さが全面に押し出されててめっちゃ好きです、、、これからも更新応援してます! (2021年8月17日 8時) (レス) id: bb984743a2 (このIDを非表示/違反報告)
まつあい(プロフ) - めちゃくちゃ好きです…泣 (2021年8月17日 5時) (レス) id: 616babd1d8 (このIDを非表示/違反報告)
愛月咲良(プロフ) - この作品に会えた事を感謝します… (2021年8月17日 4時) (レス) id: 4a6d894003 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年8月17日 1時) (レス) id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:金蔓ゆるり | 作成日時:2021年8月16日 5時