尻軽彼女と純情彼氏【三ツ谷隆】

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　そんな三ツ谷を、訝しげな表情の羽鳥が見上げている。真剣に考えている三ツ谷は、その視線に一向に気付く様子がない。


　キスをしたら下心があると思われるのでは？ いや無い訳では無いが。かと言って下心しかない訳では無いし。しかし恋人とキスしたいと思うのは全く普通の事なのでは？


　悶々と思考を繰り広げる三ツ谷をじ、と黙って見上げていた羽鳥は、やがて少しだけ背を伸ばして、三ツ谷に顔を近づけた。
　


　
「、」


　
　
　ふに、と、唇に柔らかい感触。少しのベタつきを残して離れていく、羽鳥のしてやったり、とでも言いたげな満足気な顔。
　


　
「奪っちゃった」


　
　
　にひ、と無垢に笑んだ羽鳥に、三ツ谷はカーッと顔に熱が集まるのを感じていた。


　はく、はくと口が開いたり閉まったりして、脳みそがかき混ぜられたように言葉が纏まらない。
　


　
「も、」

「も？」

「もう一回してもいいですか……」

「！ っふふ、はい、どうぞ」


　
　
　煌めく瞳が瞼の奥に隠されて、三ツ谷はゴクリと喉を鳴らした。羽鳥の頬を両手で包んで、そっと、顔を寄せる。



　二度目のキスは少し甘くて、蕩けるようなホワイトムスクの香りがした。
　
　
　
　
　
END



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