貴方の宝物じゃない。【御影玲王】

36 ページ37

今、Aは何故かグランドのベンチに座っている。

『なんでこんな所に私はいるんだろう…。』

｢まぁまぁいいじゃない。だって、凪くんが御影くんに捕まってるんだもん。それに誰かさん御影くんに謝ってないし？｣

『それはそうなんだけど…』

有紗の綺麗な人差し指が凪達を指した。
2人は、練習着に着替えてサッカーボールを抱えながら何かを話していた。


｢いいか凪お前は、俺の言う通りに動けばいいから｣

｢ほーい。｣

なんか仲良くなってるなぁなんて思いながらじっと凪がサッカーをしているのを見ながら懐かしいなぁと呟いた。


『凪にサッカーなんて出来るのかな…？』

そもそもスポーツしてるところなんてほとんど見たことないし、やっててもやる気がないから基本適当だし。

運動神経があることは認めるけど…。


｢私が言うのもなんだけど、御影くんって人を見る目あると思うんだよね。｣

『んっ？うん…』

いきなりの有紗の言葉にきょとんとするもAは首を傾げた。

｢多分、凪くん凄い人だと思う。｣

『いやいや、凪は初心者も初心者…素人だよ？そんなたまたま出来ちゃったスマホのトラップを見ただけで…』

運動神経があるのは認めるけど、自分もサッカーをやってた身としてそんなすぐに上手くなるものじゃない。有り得ないでしょなんて思っているとAは目を疑った。


『うそっ…』

玲王がボールを出したその先にはただ立っている凪がいた。ただ立っていただけなのにボールが凪の足に吸い込まれるように綺麗にトラップしていた。

｢これをゴールに入れる…｣

そう凪は呟くと綺麗にシュートを決めた。

｢すげぇっ！！凄いぞっ凪！！さすが俺の宝物っ｣

｢うぇ…こんなの簡単じゃん…。｣

そう言うと玲王は凪に駆け寄り凪の頭をぐりぐり撫でくりまわしていた。

｢ふふふっやっぱりすごい子見つけてきたなぁ。ねっAやっぱり凪くん凄い…A？｣

じっと2人を見つめるAを見て有紗は首を傾げたがAの子供が宝物を見つけた様な表情を見て微笑んだ。


『聞いてないよ…こんなの。』


今思えばこの時私はただただこの2人の凪誠士郎と御影玲王のサッカーに見惚れていた。

37→←35

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す