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「…は?」

「この契約書をお前に返したらお前はなにを差し出す?」

「な、なんでもします。テストの対策ノートでも卒業論文の代筆でも、出席日数の水増しでも、なんでもあなたの願いを叶えます!」

「成る程、実に魅力的な申し出だ。」

いいな、俺ならアイツらに復讐を願うな。

「ならーー」

「だが…悪いが、その程度じゃこの契約書は返してやれそうにねぇなァ。」

「…えっ?」

「俺はな、今、監督生(アイツ)に脅されてんだよ。契約書の破棄に協力してくれなきゃ、毎日朝まで毛玉と一緒に部屋の前で大騒ぎしてやるってなァ。」

「は…?」

「お前にオンボロ寮を取られちまったら俺らが寝不足になっちまう。」

『そうそう、俺もあんな半人に毎日寝不足まで追い込まれたらたまったもんじゃないよ。』

「そう言うわけで、アイツらにサバナクローから出て行ってもらうためにも、契約書(コイツ)は破棄させてもらうぜ。」

「まさか、そんなことで…!?」

「悪党として監督生(アイツ)に一歩負けたな、アズール。」

全く酷いやつらだこと。

「う、嘘だ…やめろ!」

だが、残念ながらお前の負けだ、アズール。

「ーさぁ、“平伏しろ!”

"王者の咆哮(キングス・ロアー)"!」

「やめろおおおおおおおお!!!」


ザラザラッ!


ユニーク魔法で契約書全てが砂に変わってゆく。

「あ、あああ…ああああ…!!!僕の、僕の"黄金の契約書"が…っ!全部、塵に…っ!」

「アズールクンのユニーク魔法"黄金の契約書(イッツ・ア・ディール)"、一度サインをした契約書は、何人たりとも傷つけることはできない。」

「わざわざ何度も破れないところを見せびらかし無敵だと印象付けていたが…全てにおいて完全無欠な魔法なんかない。状況から見て、VIPルームの中、あるいはお前が手にしている時だけ無敵効果が付与されているんじゃないかと予想したんだがーー。俺の魔法で簡単に砂に変えられたところを見るとその読みは当たったらしいな。」

『オモシロイコトするねぇ。ラギーの言う通り一時的なものだったね。』

「契約書自体の強度は、ただの紙同然だ。」

「そ、そん…な…」

「シシシッ!監督生くんたち(アイツら)の脅しなんかレオナさんなら一発でぶっ飛ばせちゃうのに…なんでここまで手伝ってやるのかなーって思ってたんスけど。俺、理由がわかっちゃったッス。」

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作者名:矢印 | 作成日時:2020年5月29日 2時

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