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Order No.1 ページ1

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大学のキャンパスから歩いて5分。
路地に入った隠れ家のようなカフェは、案外近くにある。
れんが造りの小さなカフェ。
まるで、3匹の子豚でも住んでいるかのような、かわいいお店。

お昼時にこのカフェで昼食を食べるのが、
最近のマイブームだ。


『こんにちは〜』


こんな路地にあるせいでいつもお客さんが少ないからか、
何度か通っただけで店員さんや店長と随分仲良くなってしまった。

いつも決まって注文するカフェオレは、甘さが選べるのだけれど、
苦いものが苦手な私のために、声をかけずとも甘く作ってくれる。


『ありがとうございます。それと、今日はたまごサンドで。』


注文を終えて、同じカウンターの向こう側に座っている人を
ちらっと見た。今日も来ている。

彼は、私が行く時間にいつもいるお客さん。

この時間は毎日、私と彼の2人しかお客さんがいない。
決まって、低く心地の良い声でブラックコーヒを頼んで、
静かに、それでいて楽しそうに店長と話をしている。

彼が時折見せる笑顔や、ふわふわと揺れる綺麗な髪が
私がいつも鞄に付けているしろくまのテディベアに似ていて
ついつい見入ってしまうのだ。


そうしていると、不意に目の前にお皿が置かれた。


「彼のこと、気になるのかな。」


『店長!いえ、そういう訳では…』


彼にもう一度目を向ける。
コーヒーを片手にスマホを見ているけれど、
”かっこいい”というより”美人”が似合う彼は
何をしていても絵になりすぎる。


『モデルさんか何かですか?』


「モデル?Aちゃん、左馬刻君のことを知らないのかい?」


『え、やっぱり有名な方なんですか!』


私がそう言うと、お腹を抱えて、でも上品に笑った。
笑い声を聞いて、向こう側の彼もこちらを見た。


「ははは、左馬刻君、案外知名度は低いのかな?」


「ンなわけねーだろ。逆に俺様もびっくりだわ、本当にしらねぇのかよ。」


眉間に皺を寄せて私を見下ろす彼。
なんだかこの顔、見覚えがある気がする。
もしかして、いや、もしかしなくてもこの人は…


『あ、碧棺左馬刻…!?』


「おー。” 左馬刻さん ” な。ちゃんと知ってんじゃねぇか。」


『え、え、だって、アロハ着てない…』


「あ?ふざけてんのかコラ。」


この出会いは、実の所ディビジョンラップバトルに
あまり興味がなく、彼のことを
ヤクザでラップがうまくてよくアロハシャツを着ている人
としか認識していなかった私を大きく変えることになった。



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作者名:さざなみ | 作成日時:2020年6月19日 13時

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