Moon Lady (ページ10)

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Episode 8 【ココアサイダー】ページ10

ようやく彼女が1人になってくれた。
まさか40分もの時間がかかるとは予想外だった。

「頼むぜスピカル」

「まったく、子供ならまだしも女への好感度上げに俺を使わないでくれ旦那」

溜息を吐いて再び羽ばたいて持ち場につくスピカル。
それを見越して声をかける。

「誰かしら」

その言葉に愛想という名の微笑みが飾られている。
彼女からしたら俺は初対面の知らない男だ。そりゃ嫌だろうな、なんて。

「いやいや、俺は連中みたく名を名乗れるほど高貴な身分じゃないんだ。君に自慢できる話もこれといってないんだが、ただ君と話してみたかったのさ。」

「ふーん、なら言い方を変えるわ。私は理香子よ。『丹波家』の理香子じゃなくて、『普通の女』の理香子。貴方は？」

「おっと、こりゃ答えるしかないな。俺は司。
本が好きで、空想話が好きなしがない一般市民さ。理香子、君はファンタジーは好きかい？」

「ファンタジー？私も好きよ。本なら基本的に何でも好き。」

「そうか！なら一つ俺の特技を見せよう！」

指笛でスピカルを呼び出し、腕に止まらせる。

『やぁ、お嬢さん。僕、カラスだよ！』

「…まぁ、」

「カラスくん、理香子にご挨拶してくれ」

『よろしくね、理香子お嬢！』

スピカルには喋ってもらい、俺は口を噤む。

「腹話術？すごいわね」

「あぁ、子供達にも受けがいいんだ。」

「子供、好きなの？」

『司はよく子供達に朗読劇もやってるんだぜ。
ファンタジーなら得意中の得意さ！』

「まぁな、聞いてくれるかい？

はるか北にある氷の王国…君が寒いのが嫌いなら海が綺麗な南の国での話をしよう。それとも、ダンジョンのような迷宮に探検に行った話？

君は何が聞きたいかな？理香子」

バルコニーの中央にあるテーブルに座り、理香子に椅子を譲る。

「ふふ、全部聞きたいわ」

彼女はそう言って座ってくれた。

…やっと笑ってくれた、なんて少し嬉しい気持ちになったのは秘密だ。