Moon Lady (ページ8)

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Episode 6 【ココアサイダー】ページ8

時刻は20時、宝石展の受付は真っ最中、
…そして、犯行予定時刻まであと1時間だ。

あれからお得意様に頼んで宝石展のプレミア招待状を貰い、丹波美術館の間取り図やセキュリティハッキングを施すのにそう時間はかからなかった。

宝石展はドレスコードだから、家にある燕尾服を着てきた。スピカルは相変わらず俺の肩に乗っている。

「それじゃスピカル、また21時に。
何か怪しいことがあったらすぐに呼んで。」

「あぁ。怪盗が来るっていうのに、やけに警備が手薄なのが怪しい。ヘマすんなよ、旦那」

「分かってるって。行ってくる。」

本当に分かってんのか、と言いたげにスピカルは羽根を1,2枚落としながら高く上っていった。アイツ最近反抗期なのか？

「まぁこんなとこで突っ立ってる訳にもいかないし、ひとまず入るとしますか。」

そう呟いて、美術館の中に入る。

ふらふらと宝石を見て回ると、お得意様ともう1人…この美術館を作った人間がいる。

「小説家の凪くんじゃないか。君の小説は読ませてもらっているよ。私は君のファンだからね。」

「これはこれは、丹波当主。本日はお招き頂きありがとうございます。素敵な宝石たちを堪能させて頂きますね。」

そして、聖母マリアの涙は頂きます…なんて、内心そんなことを付け足して、また館内を歩く。

しかし周りは男、男、男とむさ苦しい。まるで華がない。
そう思っていると、一定のところに野郎共が集まっている。

その中で、一輪の綺麗な花があった。

まるで宝石のように輝くサファイアブルーのドレスが彼女の魅力を最大限引き出し、とても輝いている。

ただ心なしか、

「笑っていない…？」

顔は笑っているのに、まるで笑っていないようなのだ。
周りの野郎共はそれにさえも気づけないとは憐れなもんだ。

「あとでご機嫌治ってたら声かけにいこ」