Episode 44 【ココアサイダー】 ページ46
「まさか俺にヒモになる未来があるとはな」
「何言ってるの?丹波家再建のためには貴方にも協力してもらう。忙しくなるわよ?」
「ははっ、冗談だ!君と居れるなら、それぐらいお安い御用さ」
そう言ってまた彼女は笑う。高貴で優雅な微笑みではなく、悪戯っ子のようなニヒルな笑顔で。
やっぱり、君にはそっちの笑顔の方がいい。
「…分かった。」
「お父様…!」
丹波家当主が重い口を開いた。その口から出たのは肯定だ。
ただ、顔は晴れていないけれども。
「だが、怪盗シャルル。」
「…何か?」
……なるほど、俺には何かあるのか。
「貴様は丹波家には必要ない。すまないが__」
当主の言葉は最後まで聞こえなかった。
…いや、聞いてたけど俺が聞こえていない振りをしたんだ。
理香子を背後に隠し、斬り裂かれた大きな扉口に立っている彼女に目を向ける。
「お呼びでしょうか、旦那様。」
「倉木…!」
にこりと笑う彼女の目に光は、ない。
…これは俺も腹をくくらなければならないようだ。
「…倉木。理香子を唆し、私を貶めた怪盗シャルルを殺」
「なぁ当主様、1つ取引をしようじゃないか」
「何だ。」
当主の命令を制止し、彼の前に立つ。
「もし俺が彼女の太刀筋を1回でも受けたら、喜んで此処から、娘さんから手を引こう…だが俺が此処に戻ってきたら、彼女の要件を全て飲め。1つ残さず全て。」
それでどうだ?、当主に問いかける。
「はぁ?ふざけ_」
「くたばれ丹波財閥!!」
外から罵声が聞こえた。よくよく耳をすませると、騒ぎ声が飛び交っていた。
「よくも俺たちを騙したな!この腐れ外道!」
「アンタらのおかげでうちの会社は倒産だ!どうしてくれる!」
「怪盗シャルル!司おにいちゃんと理香子おねえちゃんを助けて!!」
顔見知りから知らない人間まで、数え切れない人が丹波家の家の前まで訪れていた。
「こ、この民衆は一体…!?」
「さぁ?鴉が悪戯したんじゃないんですか?
…ちなみに、警察が動いてそれこそ丹波財閥が死ぬような情報はまだ出てませんね。」
「怪盗シャルル…!」
「じゃあ俺はその情報もベットしよう__取引、受けてくれますよね?」
俺の眼前で悔しそうに睨みつける当主。
「…分かった。受けよう。」
「どうも、お気遣いに感謝します。」
にこりと笑って、背を向ける。
横には、不安そうな顔をした愛しい人がいる。
「理香子、君は此処にいてくれ。
大丈夫。必ず此処へ戻ってくる。」
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夕焼けと白猫 - とても面白いです。 更新、頑張ってください。 (2018年6月21日 21時) (レス) id: 76272ba197 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Laurence x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uranaikari1/
作成日時:2018年6月17日 23時