Episode 41 【Laurence】 ページ43
「お父様の、ところに…」
話を付けに行く。それが私にとって、どれだけ恐ろしいことか。思わず、彼の服の裾を掴んでしまう。
「駄目、よ」
その声は残念ながら、自分でも恥ずかしくなるくらいに震えていた。ぎゅ、と唇を噛み締めて、なんとか泣かないように心掛ける。
彼は一瞬だけ暗い顔をしたが、それでも笑顔で、優しく、安心するような声色で問い掛けてくれた。
「どうしてか、理由を聞かせてくれるか?」
ごくりと、唾を飲む。彼は秘密の共有者で、守りたくて、でも守られてばかりな、私の好きなひと。そして、気障な怪盗さん。
だから、ロマンチックな雰囲気と掛け離れた、この言葉を言うのも憚られた。けれど、言わなければ、彼が。
「__行ったら、殺されるわ」
丹波理香子の父親“丹波雄二”は、もう、人間ではない。利用すべきは利用しつくし、食べるべきは骨の隅から隅まで飲み込み、要らない物は即座に切り捨てる。
私達は利用しきれない、要らない物。お父様の元へ行けば、幾ら私が娘であろうと、知っている情報を全て吐き出させられて、終わり。
「私、まだ、丹波理香子で居たいの」
まだ、死にたくない。
子供達に悪戯を教えることだってしてないし、私も物語を語ってみたい。
皆へと歌を披露してみたいし、叔母様方から様々なことを教えてもらいたい。
そして。
「貴方の話を、まだ聞いていたい!」
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夕焼けと白猫 - とても面白いです。 更新、頑張ってください。 (2018年6月21日 21時) (レス) id: 76272ba197 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Laurence x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uranaikari1/
作成日時:2018年6月17日 23時