Moon Lady (ページ40)

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Episode 38 【ココアサイダー】ページ40

「それじゃあスピカル、そっちは任せたよ」

「おう。終わったら合流する。理香子お嬢を頼んだぞ」

夜空に浮かぶ満月、その下で行われる丹波家主催の宝石展。
ついに、お目当ての宝の登場。群衆が『貴婦人の夢』に目を奪われる。

「ついにお出ましだ。それじゃあ行ってくる。」

「はいよ、Good luck」

スピカルとの無線を切り、人々がステージへと集まったのを見計らって、丹波美術館の大きなガラスの窓を破壊した。

マダム方の甲高い悲鳴を始め、多くの人間が騒ぎ始めた。

「Ladies & Gentlemen、素敵な夜をお過ごしですか？」

お決まりの常套句を謳いながら、館内へ入っていく。

「ごきげんよう観衆の皆々様！今宵は私怪盗シャルルの華麗なるマジックをどうぞお楽しみください！It’s Showtime！」

指を鳴らし、色とりどりの花を天井から散らせる。

それは確かに美しい。言い換えたら視界の邪魔になるから撹乱代わりだ。

「やぁご令嬢、お久しぶりです。今夜は僕に挑戦状をくれてありがとう。」

「ふふ、貴方を待っていたわ。さぁ、盗めるものなら…」

「その必要はありません、お嬢様」

1人のレディーが、ご令嬢を押し退ける。
彼女が振りかざしたのは日本刀。そしてその矛先は…俺だった。

「お嬢様に近づく輩は、私が成敗して差し上げます」

日本刀は右肩から左腰を劈き、鮮血が白いスーツを赤く染めあげる。
その生々しさに目を逸らす観客も少なくない。

…そして、絶望感に満ちた表情を浮かべた女がいた。

「嘘っ…！怪盗シャルル！怪盗さん…！」

「なりませんお嬢様！危険ですので行っては！」

「離して、今行かないと彼が…！」

取り乱す彼女を警備員が押さえる。

いや、言い換えよう。俺が押さえている。

「ご令嬢、君には俺の声が分からないかい？」