検索窓
今日:18 hit、昨日:0 hit、合計:2,374 hit

Episode 35 【Laurence】 ページ37

「出しなさい、倉木!」

 そう叫びながら、扉に向かって回し蹴りを喰らわせる。けれど、扉には傷ひとつ付かなかった。今度は両手で扉をたたき始めた。

何故、私がこんなことをしているかといえば。簡単に表せば、自室に閉じ込められているから、である。

「倉木の馬鹿ー!」

今度は、扉に向かって叫ぶ。けれど扉が開くことは無く、私は疲れた身体をベッドへと投げ出した。

すると、窓硝子を小さく叩く音が。

「スピカル!」

「やぁ、理香子お嬢。元気そうでなによりだ」

「ちょっと待って、今の見てた!?」

「ああ、ばっちり」

 小さく笑われたので、私は顔を両手で覆う。全く可愛くない所を見せてしまった。うう、なんて小さく呻きながら顔をあげると。

「司には絶対言わないでよね!」

「はいはい」

 スピカルの馬鹿。なんて小さく呟けば、彼はまた笑う。もう、なんて怒れば、更に笑われた。暫くそれが続いていたが、不意にスピカルが言葉を放つ。

「…ここから出られないのか?」

「いいえ、実は出ることは可能よ。ただ、私が居なくなれば司にも被害が及ぶでしょ? 取り敢えず宝石展の日までは、この行為を続けるつもり」

 そこで、彼等に渡さなければならない物を思い出し、あ、と声を漏らす。ベッドから立ち上がって、棚を探ると、お目当ての物が。

「これ、司に渡して頂戴」

 そう言って、USBメモリをスピカルへ渡す。これには“没落計画”に使用しようとした、倉木に削除されたデータの一部が残っている物だ。

「あと。『私はマリーナみたいに、どちらとも決められない“悪女”になるつもりは無いわ』って、伝えておいて」

「…旦那が何かしたのか?」

 ふふ、と軽やかに笑う。彼が街で、“マリーナ”と私を被せたことを忘れてはいない。言われたことは、しっかり返さないと。

「さぁ、何でしょう?」

Episode 36 【ココアサイダー】→←Episode 34 【ココアサイダー】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (2 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

夕焼けと白猫 - とても面白いです。 更新、頑張ってください。 (2018年6月21日 21時) (レス) id: 76272ba197 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Laurence x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uranaikari1/  
作成日時:2018年6月17日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。