Episode 35 【Laurence】 ページ37
「出しなさい、倉木!」
そう叫びながら、扉に向かって回し蹴りを喰らわせる。けれど、扉には傷ひとつ付かなかった。今度は両手で扉をたたき始めた。
何故、私がこんなことをしているかといえば。簡単に表せば、自室に閉じ込められているから、である。
「倉木の馬鹿ー!」
今度は、扉に向かって叫ぶ。けれど扉が開くことは無く、私は疲れた身体をベッドへと投げ出した。
すると、窓硝子を小さく叩く音が。
「スピカル!」
「やぁ、理香子お嬢。元気そうでなによりだ」
「ちょっと待って、今の見てた!?」
「ああ、ばっちり」
小さく笑われたので、私は顔を両手で覆う。全く可愛くない所を見せてしまった。うう、なんて小さく呻きながら顔をあげると。
「司には絶対言わないでよね!」
「はいはい」
スピカルの馬鹿。なんて小さく呟けば、彼はまた笑う。もう、なんて怒れば、更に笑われた。暫くそれが続いていたが、不意にスピカルが言葉を放つ。
「…ここから出られないのか?」
「いいえ、実は出ることは可能よ。ただ、私が居なくなれば司にも被害が及ぶでしょ? 取り敢えず宝石展の日までは、この行為を続けるつもり」
そこで、彼等に渡さなければならない物を思い出し、あ、と声を漏らす。ベッドから立ち上がって、棚を探ると、お目当ての物が。
「これ、司に渡して頂戴」
そう言って、USBメモリをスピカルへ渡す。これには“没落計画”に使用しようとした、倉木に削除されたデータの一部が残っている物だ。
「あと。『私はマリーナみたいに、どちらとも決められない“悪女”になるつもりは無いわ』って、伝えておいて」
「…旦那が何かしたのか?」
ふふ、と軽やかに笑う。彼が街で、“マリーナ”と私を被せたことを忘れてはいない。言われたことは、しっかり返さないと。
「さぁ、何でしょう?」
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夕焼けと白猫 - とても面白いです。 更新、頑張ってください。 (2018年6月21日 21時) (レス) id: 76272ba197 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Laurence x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uranaikari1/
作成日時:2018年6月17日 23時