Episode 24 【ココアサイダー】 ページ26
彼女は不器用に微笑んだ。
その不器用さは、他人から見たら気づくか分からないぐらい小さいもの。
けれど気遣われた俺たちにはとても大きなものに見えた。
…なんていじらしくて、儚いんだろう。
「…降りないさ。君がここまで言ってくれたのに。」
立ち上がって、彼女を自分の胸に抱き寄せる。
「これで、君と俺は共犯者だ。
君が望むのなら、俺は怪盗でも騎士でも犯罪者にでもなろう。
俺も一緒に持とう。
君が背負ってきたものを。」
彼女は俺の胸に顔を埋めて、肩を震わせた。
…微かに聞こえる嗚咽には、聴こえてないふりをした。
◆
「理香子お嬢、大丈夫か?」
「うん。泣き疲れて寝ちゃった。相当溜まってたみたい。」
目立たないように身支度を済ませ、家に送ってくから留守番よろしく、とスピカルに伝えて再び外に出た。
「ここか、彼女の部屋は。」
誰もいないことを確認し、窓を開ける。天蓋付きのベッドの上に彼女をそっと乗せた。
「泣いているレディーに何も出来ないなんて、俺もまだまだ未熟だな。」
自嘲ぎみに笑って、彼女の赤くなった目元をそっとなぞる。
その指は頰を伝い、髪の毛をいくらか掬った。
「高望みはしない。断ってくれても構わない。
ただ、俺を君の傍に置いてはくれないか。
……君にこんな感情を抱いても許してくれるか。」
そう呟いて彼女の髪に口付けを落とし、家を後にした。
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夕焼けと白猫 - とても面白いです。 更新、頑張ってください。 (2018年6月21日 21時) (レス) id: 76272ba197 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Laurence x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uranaikari1/
作成日時:2018年6月17日 23時