Moon Lady (ページ24)

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Episode 22 【ココアサイダー】ページ24

まさかこの家に俺以外の人間…しかも女の子を連れてくるとは思いもしなかった。こんなことならこまめに掃除しておけばよかった。

「さぁ、上がってくれ。あぁ、そこに落ちてる紙は踏まないよう頼むぞ」

「ほとんど紙だらけじゃない」

くすくす笑いつつも上がって紙を拾う彼女。
集めつつも隅に書いているページ数を見ながら整理している。真面目だな、なんて彼女の何気ない仕草を見て少し嬉しくなる。

彼女から視点を移し、冷蔵庫やら棚やらを漁る。

「今用意出来るのは紅茶とコーヒー、あとホットミルクかな…お前らはどれがいい？」

「紅茶で。」

「俺はホットミルクだな」

「ご令嬢が紅茶、スピカルがホットミルクだな。了解。」

生憎紅茶はティーパックで作るインスタントものだ。名家のご令嬢に飲ませて大丈夫か…

「ねぇ、ホットミルクを頼んだスピカルって人は誰？此処には居ないけど…」

そう言いながらキョロキョロするご令嬢。
…あぁ、そういえば言ってなかったかな。

「あぁ、スピカルならそこにいるよ。ほら、君のすぐ隣に。」

俺が指差すと、彼女は素直にその方向を見る。

彼女の目の前には、一羽の鴉。
…否、俺の唯一無二の相棒『スピカル』。

「やぁ理香子お嬢。また会えて光栄だ。」

この数秒後、部屋にご令嬢の甲高い悲鳴が響いた。

◆

「心臓が止まるかと思った…」

「いやぁ驚かせてすまない！スピカルは人の言語が話せる世にも奇妙な鴉なのさ！」

「俺を都市伝説みたく言うな、旦那」

客人用のティーカップに入った紅茶を飲むご令嬢、皿に入れられたホットミルクを飲むスピカル。そして目の前にはマグカップに入ったコーヒーがある。

…ひとまず役者は揃った。

「それでは改めて自己紹介をしよう。

俺は夜凪司。普段は小説家『凪』として執筆活動をしている。俺の後ろにある本棚に一列だけ本が連なっているが、あれは俺が今までに出した本だ。

＿そして、又の名『怪盗シャルル』。相棒のスピカルとこれまでに盗んできた宝は数知れず。そして、これでも紳士を名乗っている。全世界の女性の味方だと胸を張って言おうじゃないか。

…ここまで話したからには、もう後には引けない。お互い手の内を曝け出そうじゃないか。

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ご令嬢、君が知っている丹波財閥のことを全て教えてくれ。」