Episode 21 【Laurence】 ページ23
「って、ちょっと言ってみただけなんだから」
困った顔の彼に、からりと笑いかけながら、そう言葉を返す。駆け落ち、カケオチ。そんなものに憧れたこともあったな、なんて思う。
実際は、そんな素敵な物でも無いのかも知れないけれど。
「それに、幾ら国内有数の財閥令嬢だったとしても、小さい頃はお姫様に憧れて王子様に恋い焦がれたこともあったのよ」
お姫様、王子様は、何時も女の子の憧れ。それは幾ら財閥令嬢である私とて、同じことだった。
「ただ、私は“お転婆令嬢”の名を持つお姫様だったから、王子様が迎えに来ないのならば此方から行ってしまおう、なんて考えてたけれどね」
ふふ、と涼やかに笑う。良くベランダに座り込んで月を見ては、王子様は彼処に居るの?、と世話係に聞いては困らせた物だ。今思えば懐かしい。
王子様へ当てた手紙を書いたこともある。返事が返ってきた時はベッドの上で跳ねたっけ。あれは確実にお父様の字ではあったけれど。
「ま__怪盗さんが迎えに来てくれたから、それで良いかしら」
悪戯に笑ってやれば、彼はまた少し困った顔をした。そんな顔をされては、流石の私も傷付くのだけれど、なんて。そんな思いは心の隅へ追いやった。
「冗談よ、そんな顔しないで」
丹波家のご令嬢は、強くしなやかであらねばならないのだから。
・
「あら、鴉さん」
彼の家に着いてから、視界の端に映った一羽の鳥。それとも、彼の相棒さんとでも呼ぶべきであろうか。考えて小さく笑った。
そんな私は、このあと鴉のことで衝撃的な内容を聞かされるのだけれど、それはまあ少し後のはなし。
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夕焼けと白猫 - とても面白いです。 更新、頑張ってください。 (2018年6月21日 21時) (レス) id: 76272ba197 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Laurence x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uranaikari1/
作成日時:2018年6月17日 23時