Moon Lady (ページ21)

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Episode 19 【Laurence】ページ21

「お嬢様、今日はご機嫌ですね」

　鼻歌混じりに、何時ものように令嬢としてやらねばならぬ仕事を淡々とこなしながら自室に籠もっていれば、入ってきた倉木は少し可笑しそうに言う。

「そうかしら？」

自身ではそんな気はしていなかったので、首を傾げた。だがまあ、機嫌は悪くない。何故ならば今日も、外に行く機会があるから。

ただし、まだ共犯の彼女にそのことを言ってはいない。なるべくなんとはなしに、素っ気無く言おう。なんて、そんなことを考える。

「あ、そうそう。今日も少し出掛けてくるから、言い訳考えといて」

「またですか！？」

　だがしかし、彼女は誤魔化せなかった。言い訳考えるの大変なんですよ、と、ぶつぶつ何かを呟いている。

ちなみに昨日のお出かけの際は、お腹が痛くてお手洗いに閉じ籠っているため、自身にはいない、ということで通したらしい。最初に聞いた時は笑ってしまった。

「お願い、倉木」

土下座でもする勢いで、そう真剣に言えば、彼女も流石に断りは出来ないらしい。肩を竦め苦笑いをして、言ってくれる。

「…分かりました」

・

　その日の晩は雲が月を隠し、何時もより暗い夜であった。時折顔を覗かせる三日月は、白く冷たく輝いている。

「Lu la ta ta…」

そんな中、自身は題名も忘れてしまった、少し前に流行った曲を口ずさみながら、とある人を待っていた。

来てくれる、なんて確証は無い。こればかりは賭け。けれど、自信はあった。相手は、『全世界の女性の味方』だなんて平気で言える、気障な男だから。

「La ta lu la ta…」

　何だか段々楽しくなって、軽くステップ、それからターン。歌って、それからまた踊る。後ろから、伴奏が聞こえてくる感覚に陥った。

だが、誰かの足音が聞こえ、ぴた、と動きを止める。足音の方向をじっと目を凝らして見れば、そこには＿＿。