Moon Lady (ページ19)

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Episode 17 【Laurence】ページ19

「最初に、謝りたいことがあるの」

　笑い掛けた後、不意に真面目な顔をする。謝っておきたかった。彼との時間を『暇つぶし』と思ってしまったこと。

「ちょっと貴方のことで勘違いしていた事があって。ごめんなさい。…何とは恥ずかしいから言わないけれど」

頬を掻き、それから苦笑いをして謝る。ちゃんと一礼してから、相手の返事も聞かずに、ぱ、と笑顔になって。

「そんな訳で、倉木に頼み込んで抜け出してきちゃいました！」

　何処かの熱に浮かされたかのようなハイテンションで、にこにこ笑う。監視の付き人無しに外に出るのは、随分と久々だった。

これでも昔は、お転婆令嬢と呼ばれたこともある私、丹波理香子。夜の散歩だなんて楽しくて仕方がない。なんてのは、声には出さないけれど。

「あ、それと」

　思い出した、というように声をあげる。それから相手をじ、と見つめ、急に真剣な声で。

「私の丹波家“没落計画”に、協力して欲しいの。」

　小さく笑った。もう、優雅で世間知らずなお嬢様の仮面は使えない。

「まずは、当主の悪行を纏めて、当主の座からアイツを引き摺り下ろす。それから、私が当主を奪って…、没落しかける丹波家を立ち直すわ」

そうして、不意に言葉を切る。無駄だとは知っていながらも、何かを強請る女の顔をする。やらないよりはまし、というだけだけれど。

「貴方が協力してくれるのなら。明日の夜、もう一度ここで会いましょう」

　そして、にたり、と。そう笑った私の顔は、丹波の令嬢に相応しい、悪戯で意地悪な、独裁者の顔であったはず。

彼には綺麗な自分だけを見せたかったな、なんて、考えるだけ無駄なので切り捨てた。だがしかし、悪戯な言葉は忘れない。

「あんまりレディを待たせないでよね！」

　最後に右手を唇にあてて投げる動作＿＿所詮投げキッスと呼ばれるものだ＿＿をして、走って夜の闇に溶け込んだ。