Moon Lady (ページ13)

今日:17 hit、昨日:0 hit、合計:2,373 hit

Episode 11 【Laurence】ページ13

「お嬢様、お下がりくださいませ！」

　怪盗シャルルと対峙した瞬間、そんな叫び声と共に、昔愛用しといた自身の薙刀が飛んでくる。慌ててそれをキャッチすれば、その声の主は、刀を片手にシャルルを狙っていた。

「倉木！」

彼女の名を呼べば、小さく微笑むメイド。今にもシャルルを殺す勢いで、刀を綺羅と傾ける。だがしかし、自身はそれを止める術を持ち合わせてはいない。

何故ならば、私はシャルルを知っているから。声には気を付けることね、怪盗さん。内心、からと笑ってやる。自身はさらりと、怒っていた。

「レディーを置いて盗みだなんて、紳士な対応では無くってよ、怪盗さん」

「お嬢様？」

「なんでもないわ」

　ふ、と小さく笑う。私は『理香子』になったけれど、相手はどうなのだろうか。まさか『司』が本名だとは思えない。

つまり、簡単にいえば私は暇つぶしに付き合わされたのではなかろうか。このわたしが、遊ばれた。キャッチした薙刀を構える。

「倉木、私も協力するわ。聖母マリアの涙を、お母様の為に守りましょう」

「はい！」

　だって、レディを放ったらかして、盗みを働く元紳士様には、制裁が必要でしょう？なんて。小さく微笑みを浮かべてやった。

まさか本当だなんて、ちっとも思いもしなかったのは、自身もそんな嘘だらけな世界に汚染されているとは気付かなかったから。

なんとも情けない、と思うのは後の話。