26話 ページ28
「いいじゃん、行けば?」
『軽々しく言わんといて!!』
「Aがいつまでもウジウジしとるんやから、行ってサッサと決めればええ」
『この間の優しさのある恵奈はどこいったんだよぉ…』
「飴と鞭や。感謝し」
『ウゥ…』
時は早いもので遂にやって来てしまった放課後。部活見学日である。
おそらく朝練中、北さんから放課後に部活見学の人が来ると聞いたであろう隣の席の治くんが一日中私に熱い視線を向けていた。ドキドキしちゃうからやめて頂きたかった。嘘、辞めないで。やっぱやめて。心臓が持たない。
そして現在。
動悸がドーキドキなのでバレー部が使用している体育館まで恵奈に介護してもらっている最中である。
「いつもハイテンションでウハウハ言ってるやつがなんでこんなに遠慮しとるんや!!」
『それとこれは話しがちゃうねん!!遠目で生暖かい目で見るのと私があの空間に入ってくのは違うんですゥ!!』
「ほら!もう体育館着くんやからあとは自分で行きな!キタ先輩待っとってくれとるんやろ!」
『アアアアアア』
気合いを入れろ、と恵奈に喝を入れられ(背中を思っきり引っぱたかれた)体育館に繋がる廊下の前まで来た。
………
怖くて先進めね〜〜!!やばいぐらい心の臓がドキドキしてるよ…救急車を…呼んでくれ……
カサカサと挙動不審な行動をしながら体育館に繋がる廊下へと一歩踏み出した。
「お、今狐」
『ヒィッ!!
あ…北さん…!』
「教室まで迎え行ったんやけど先に体育館来とったんやな」
『お迎え来てくださってたんですか!?』
ガッデム。その夢シチュエーションを無駄にした私よ、滅びよ。
いや、北さんにお迎えなんかしてもらったら体育館じゃなくて天国に向かってしまう。危ないところだった…。
「なんや嬉しいなぁ」
『え、何がですか』
「今狐がマネやるか真剣に考えてくれとるんやなって思ってな。
今までマネ希望してきた子はおったけど真剣って感じせんくて断ってたんや。」
『あぁ、宮兄弟とか人気やからマネやりたい子多かったんですよね…』
「まぁな」
『……でも、私も迷惑やないですか?』
スカートの裾を握った。
私に期待してくれていることは凄く嬉しいし、それに応えたいとも思うけど、やっぱり"稲荷崎バレー部を推している"私がマネージャーをやるのは今までの子達と同じで、選手目当てみたいなものだ。
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作者名:柚子檸檬 | 作成日時:2024年2月18日 9時