25話 ページ27
『私って案外単純なんかなぁ…』
「何分かりきったこと言ってるの」
『ちょっとお黙りください』
「ま、あの感じじゃやらない一択っぽいね」
『……いや、実は迷いはじめたんよね』
角名くんの切れ長な目が大きく開かれる。
目力強いな。
確かに、前に角名くんと話した時にはキッパリとやらないって言った。角名くんスルーしてたけど。案外聞いてたんだ。
「ふぅん…じゃあ、試しに明日部活来てみたら?」
『エ"』
「実際来てみてやるかやらないか決めたらいいんじゃない」
『いや、あの待ってそれはさすがにハードルが高すぎ…』
キーンコーンカーンコーン…
私のセリフに被せてくるように昼休み終了のチャイムが鳴った。
タイミングよすぎるだろ、私の事嫌いか！
「じゃ、北さんには伝えといてあげるよ」
『待っ…』
感謝してネ、と小生意気なセリフを残して角名くんは自分の席に戻って行った。
マ ジ か よ
脳裏にクソデカ文字でこの言葉が流れてきた。
頭を抱えた。本当にハードルが高いって。キツイって。供給過多で溺れしんじゃうって。
教室に帰ってきた治くんに頭痛いんかって心配されて余計に脳内爆発した。
治くんからの心配は全ての病を打ち消す力があるよ…
五限の古典なんてなんにも頭ん中入ってこなかった。
間近で稲荷崎バレー部なんて見たら初めに鼻血を出して失神して保健室に運び込まれていく私の哀れな姿しか考えられなかった。
明日はわたしの命日になるんだ……お母さんお父さん今までありがとう。健やかに過ごすことが出来ました…
そう天を仰いで一日が終わってしまった。
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作者名：柚子檸檬 | 作成日時：2024年2月18日 9時
