【文スト】海、割りました。2nd【中原中也】 (ページ8)

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Break52 ページ8

〈中也side〉

ズキズキと鈍く頭に響く其れは、二日酔い特有の頭痛で。

「あー…いってェ…」

居心地悪く奇妙に歪み、霞む視界。

ゆっくりと上体を起こせば、徐々に其れははっきりし始める。

…ん？待てよ？

モノクロ調の家具や壁紙は見当たらず、

割とシンプルでありながら“所謂女子の部屋”を彷彿とさせる家具(デザイン)。

そしてどこか見覚えがある。

女子の部屋なンて、数多の女を引き連れる太宰とは違う俺は、

実はそんなに縁がない。

其れに、社内恋愛なんて以ての外だ。

ポートマフィアは圧倒的に男の方が人数が多い。

「なッ…なあぁぁあぁぁあぁ！？」

寝起きから早速、二日酔いで痛む頭をフル回転させる事で、

目が完全に冴えたと共に、全てを理解した。

あ？叫び声は近所迷惑だァ？

違ェんだ。違ェんだよ。

俺の隣は空き家とAで、

そのAは現在何故か俺の下にいる。

否、下の階に越した事の比喩じゃないことをどうか理解してほしい。

因みに越してない。まだ隣に住んでいる。

…って問題はそこじゃないんだよ莫迦野郎。

俺の心の声と闘いながら、

すやすやと気持ち良さそうに寝息を立てているAの姿にちらりと目を向ける。

俺の今の気持ちを知らないだろう其奴は、

釦が完全に外されたYシャツを着、紅い華を咲かせた白い肌を露わにした状態でいる。

俺…真逆、やっちまった訳か？

だとしたら…否、だとしなくても此れは拙い。本格的に拙い。

此奴の上に俺が馬乗りになっている時点で完全に有罪判決だ。

ならAに気付かれない内に降りて、シャツの釦を全て閉めるか？

いやいや。

此の体勢からバレないで降りるのは困難極まる。

其れに………直視しろと？

無理だろ。

…別に恥ずかしい訳じゃねェ。

バレる前に全ての釦を閉めるような高等技術は生憎持ち合わせてねえだけだ。

其れに閉めたところで此奴が着替えたら意味がないんだよ。

詰んだか。

否、未だ何か策は残されている筈…。

あああ兎に角此奴が目を覚ましちまう前に…！！

『ん……』

遅かった。

寝ろ。もう一回寝ろ。今日だけは二度寝していいんだぜ！

なんて願いと云う名の魂の祈りも虚しく。

『ち、ちちち中也さん！？！？』

…ぱっちり目を開けちまった。

嗚呼、五大幹部の一角、尊厳失いし。