第１９３話 ページ44
というわけで、ネイルをすることが決定した。なお柄は浴衣に合わせるため、先に浴衣と帯を選ぶことになり、決まった人からネイルすることになった。
Aは浴衣をあっさりと決めていたので、先にネイルをすましていた。
濃い紺がベースの生地でところどころに白と薄紫の花弁が散りばめられている浴衣。帯は濃い朱色で斜めの白いラインが入っている。
浴衣の色合いが濃いため、ネイルはシンプルに、梳け感を意識した。爪の根元から半分を透明にし、上半分を水ヨーヨーのような柄にする。使用した色は白、紺、赤と浴衣に合わせた。
「こんなもんかな」
両手が終わり、一息つくと浴衣決めがいち早く終わっていた芦戸が手先を覗いていたようで。
「すごー！ きれ―！」
「いや語彙力」
何とも単純な感想に吹き出してしまった。
それからはひたすらに彼女たちの爪と向き合い続けた。
まず芦戸。彼女が選んだのは白生地に紫っぽい桃色の菫が描かれた浴衣。帯は濃いすみれ色。何とも彼女らしい。彼女はそもそもの見た目が派手だ。彼女もシンプルめに行こう。
透明な下地に、白と濃いめのピンクで花火柄を描いた。
「はがすのもったいない！」
終わった後、キラキラした目で自分の爪を見つめていた。
次、白生地に鮮やかな赤と黒の椿柄の浴衣、帯は赤。麗日。
ザ・和風といったチョイスだ。爪もそこに便乗しよう。
下地は白、鮮やかな赤で椿を描き、花の中心に金を散りばめる。アクセントに緑の葉を添えて。すべて似たような柄にすると飽きるので、両手とも一本ずつ赤の矢じり柄にした。
「お店でやったら、高そうや…」
「タダよタダ」
ネクスト、にじんだ水彩画のようなさわやかな白と黄緑、緑で構成された浴衣、朱色の金魚が泳ぐように描かれている。帯は黄色。蛙吹。
(これはもう金魚にするしかなかろう)
というわけで、爪は極薄の緑に近い水色をベースに、金魚を散りばめる。赤だけでなく、出目金のような黒い金魚も描いた。
「とても綺麗だわ。器用ね。Aちゃん」
「喜んでもらえてなにより、梅雨ちゃん」
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作者名：玲音 | 作成日時：2020年7月21日 18時
