第１９２話 ページ43
「おぉ、…百ちゃん家。想像以上だ」
お嬢様や、と呟くAの前には豪邸が映っていた。周囲にはＡ組女子たちも一緒だ。本日は例の花火大会の日。八百万の家で着付けをさせてもらって一緒に行くことになっていたのだ。
家中に案内され、通された部屋には様々な浴衣がすでに準備されていて、まるで着物店のようだ。
(すご…)
「わー！ いろいろある！！」
「流石というかなんというか」
「豪邸やないかい！」
わちゃわちゃしているなか、Aは一人時計を確認する。
「んー、今から着付け始めちゃうと、だいぶ時間余るね」
「確かにそうですわね」
「じゃー時間つぶしに何かするー？」
という葉隠の発言にそれぞれ考えるが、最初に提案したのはAだった。
「あ！ じゃあちょっとやってみたいことあるんだけどいいかな？」
そうして彼女が発案したのは
「「ジェルネイル？」」
「うん。一度自分以外にもしてみたくて」
「やりたいやりたい！」
「私も！」
「Aさんご自分でなさるのですか！ 流石ですわ！」
「でも道具とかどうするん？」
その麗日の問いにAは大丈夫と呟いて、自分の部屋にあるネイルキットを足元に瞬間移動させる。
「すぐ持ってこれる」
「流石や」
「すぐはがせるタイプだから、支障もないと思うけど、どうかな？」
「それならやってみたいわ」
「ぜひお願いいたします！」
「うちもやってみたい！」
食い気味だった芦戸や葉隠に加え、蛙吹、八百万、麗日も同意するが、耳郎は少し難色を示した。
「うち、似合うかな…」
自信なさそうに持ち前のイヤホンジャックをいじる彼女。
「絶対似合うよ。響ちゃんだもん。ほらギタリストがやってるネイルとかあるじゃん。あんな感じにも出来るよ」
ほらこんな感じと某有名ギタリストのネイル写真を見せる。
「うわー！ かっこいい！」
「響香ちゃんに似合いそうだわ」
「これなんか耳郎さんにぴったりですわ！」
と、便乗してくれた女子面々の褒めが彼女に響いたのか
「…わかった、お願い。A」
と少し恥ずかしそうに言ってくれた。
「まかせとけ！」
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作者名：玲音 | 作成日時：2020年7月21日 18時
