第１９０話 ページ41
両親の墓を管理してくれている寺につき、管理事務所から手桶やひしゃくなどを借りて、墓の元へ足を進めた。
きちんと管理してくれているのだろう。一年前に来たきりだったが、墓石は綺麗に保たれていた。
(…久しぶり。お母さん、お父さん。)
墓前で合掌し、心の中でそう告げた。横にいる彼も手を合わせていた。
きちんと管理してくれる寺だったのでお墓の周りに草等は生えておらず枯れ葉なども落ちていない。本当にありがたいことだ。
それでも軽く掃除をする。
借りた手桶に水を汲んでおいたのでスポンジを浸し、それで墓石を拭く。それらが終わると花立てや線香立てなど取り外しできる付属品を手洗いする。
掃除が終わって、持ってきた仏花と供物、それから湯呑に水を備えた。
「お母さんもお父さんも、ここのクッキー…好きだったよね」
ろうそくから線香に火を移し、呟く。一本爆豪に渡して、先に線香を立てた。続いて彼も立てた。
「数珠ある？」
「あるわ。なめんな」
「別になめてないよ」
そうして二人で、数珠を手に合掌した。
―――知ってると思うけど、雄英入ったよ。クラスメイトみんないい人ばかりでほんと恵まれたよ。いろんなヒーローとヒーロー活動させてもらって、まだ半人前なのにファンだって言ってくれた人もいたよ。二人の母校の雄英で吸収できるもの全部自分のものにして、もっと強くなるよ。だから、見守っててね。
―――改めまして、お久しぶりです。おばさん、おじさん。最後にお会いしたのは小１の頃でしょうか。俺も高校生になりました。Aから聞いていると思いますが、小学校高学年の時に偶然会い、今はAと同じ雄英に通っています。Aには及びませんが、俺も強くなりました。あいつは強い、強すぎるくらいで、心配はしていないかもしれませんが、もし心配しているのなら、安心してください。俺が、絶対に俺が支えます。
祈りを終えて、目を開けると彼女は先に祈り終えていたようで。
自分が終わったのを確認して、ろうそくの火を消し、供物と共に下げた。
いろいろと片付けて、行こうかと言う彼女の後ろを追う。
歩みを進めようとしたとき、爆豪はふっと振り返った。
(……うス)
――Aをよろしく。
そんな声が聞こえた気がした。
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作者名：玲音 | 作成日時：2020年7月21日 18時
