第１５４話 ページ5
先程サーチした際、Aは大量の人の気配と離れた場所で一人でいる人間の気配を感じ取っていた。彼女はそれを頼りに先に大量の人の下へ向かう。
予想が正しければ、今回の行方不明の被害者たちであろう。
(ビンゴ)
暫く歩いてたどり着いた先に、沢山の人々が倒れているのを見つけた。一番近くの人に駆け寄り、今回の被害者のデータと照らし合わせて確認を済ませ彼らの状態を確認する。
「ほっ……」
どうやら全員目立った外傷もなく無事なようで、気絶というより眠っているようだ。ひとまず安心していると、こちらに近づいてくる気配を感じた。
(どうするか)
Aは一瞬迷う。もし戦闘になった場合、この場所にとどまったままだと彼らに被害が及ぶかもしれない。反対にこの場所から離れてだと彼らを人質に取られるかもしれない。
考えて、彼女はこの場から離れることにした。一度素早くこの場から距離をとって、向かってくる気配に立ち向かうように足を進める。危険な選択肢だったかもしれない。だが彼女の推理と勘は相手が危険じゃないと言っていた。
警戒しながら歩みを進めて、だんだんと近づいてくる気配。
(…！)
その目に入ったのは、真っ黒な髪に顔半分をマスクで覆った一人の青年だった。
その青年はAを見つけるとあからさまにその薄紫の瞳を輝かせた。
「わぁ！ 新しい人だ！ ねぇねぇお姉ちゃん！ あそぼ！！」
(…あそぼ？)
その場違いな発言に顔を顰めながら、Aは彼を観察した。
「…お姉ちゃんも、…僕を、こわがるの…？」
自分が何も言わないのを恐れているからと判断したのか、彼は少し落ち込んだ顔をした。だまし討ちを狙っているような気配もない。
Aは少し首を傾げながら、口を開く。
「…ここは、きみが作った世界なの？」
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作者名：玲音 | 作成日時：2020年7月21日 18時
