第１８４話 ページ35
始まりの合図とともに、オールマイトは跳躍する。それだけで暴風が巻き起こり、Aに向かって一気に距離を詰めてきた。
「SMASH！」
振るわれる拳をクロスさせた腕で受け止めるが、やはり衰えていてもＮｏ.１ヒーロー。少しでも力を抜けば、簡単に押し切られそうだ。
それに、脳に響く笑い声は止まらない。これ以上、無理をして身体能力を強化するのは危険過ぎる上、このまま維持し続けるのも厳しいレベルだ。
長期戦は圧倒的に不利な上、相手はオールマイト。簡単に逃がしてくれるとは思えない。
(……どうする)
とりあえずAは、彼の拳を角度を変えて受け流し、足を振るった。
(……カフスなしの、オールマイト)
彼女の戦いを見て演習試験でオールマイトと戦った爆豪は、自分と戦ったオールマイトが確実に本気でなかったことを改めて思い知った。
Aに振るわれる拳は、目でとらえることが出来なくて何が起こっているのか詳しくはわからなかった。
ただ、Aが防戦一方とはいえギリギリ対応しきれていることはわかった。
(俺らが戦った時以上のスピード…)
自分らと戦った時、その圧倒的なパワーにボコボコにされた。彼女はそれ以上のパワーをギリギリいなしている。
やはり彼女も、この高校生活で大幅に成長している。
仮に試験クリアにならなくとも、赤点にはなることはないだろうと直感的に思った。
Aはこれ以上パワーを引き出そうとすると危険である。そのため、オールマイトとのパワー差をこれ以上埋めることは出来ない。
スピードはほぼ互角だが、Aの方が若干劣っていた。
即ち、戦いが続けば綻ぶのは当然のことで。
「…がっ…！」
Aの防御を潜り抜けたオールマイトの拳が彼女の肩にクリーンヒットし、そのまま壁に叩きつけられそうになる。
(…っ、本当に、加減をしらないなこの人は…！！)
何とか受け身を取れたものの、右肩に鈍い痛みが走る。
――アはは、はハっ
(…まずい、な)
そろそろ決着をつけないと本当に暴走しかけない。息を吐き、落ち着かせ、跳躍する。
一瞬でオールマイトに距離を詰め、拳を振るう。
すべては、全力で逃げるために。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 116人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玲音 | 作成日時：2020年7月21日 18時
