第１６６話 ページ17
その日の放課後、Aは緑谷に声をかけられた。
「どしたの？」
「なんかオールマイトがAちゃんと一緒に来てほしいって」
「りょうかい」
そうして二人で仮眠室へ向かった。ガラッとドアを開けると縮まった彼の姿が見える。
「どうかしました？ 俊典さん」
「ちょっと、話があって」
どことなく神妙な様子の彼に、真面目な話かと察する。
緑谷と共にソファに腰かけて、彼の話を聞いた。
話はAが６年前に聞いたオールマイトの個性の成り立ちと、オール・フォー・ワンの話であった。６年前にオールマイトが打ち取ったはずのオール・フォー・ワンは生き延びて敵連合のボスとして暗躍しているという話も聞いた。
(オール・フォー・ワン…、やはり、生きていたのか)
ワン・フォー・オールを持つものはオール･フォー･ワンと戦う運命にあり、緑谷もいつか奴と、巨悪と戦う可能性があるという彼の説明と、「オールマイトの頼みなら何が何でも答える」と意気込む緑谷を眺めながら、オールマイトの様子が少しおかしいことに気が付いた。
何か言おうとしているのだろう、しかし言葉は出てこなかった。
「……、言うつもりだったんですか」
話があるから先に行っていてくれと緑谷に言って、オールマイトと二人きりになったAはそう言った。
「…ほんとは、言わなきゃいけないのはわかってるよ…」
「まぁ、…いつかは言うことになるでしょうね」
Aは６年前のオールマイトと彼のサイドキック、サー・ナイトアイの会話を思い出していた。
『このままではあなたは敵と対峙し、言い表せないような凄惨な死を迎える』
サーの個性は予知。本人が言うには今まで予知で見た未来がかえられたことはないらしい。ちなみに予知した未来は６、７年後だと聞いていた。丁度今年か、来年。
つまり、予知通り行けば、オールマイトはもうすぐ、死ぬ。
「…オール・フォ―・ワン、やっぱり生きていたんですね」
「気付いていたのかい」
「まぁ…、今回の行方不明の件でもそうですけど、脳無のような個性複数持ちを作りだせる人間なんて、それくらいしか思いつかなかったので」
「あぁ、保護した子。敵連合と接触してたんだってね。先生から聞いたよ」
「グラントリノさんですか。流石話が早い。出久もあの人のおかげで多少は個性を使えるようになったみたいですね」
「ほんと…頭上がらないよ」
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作者名：玲音 | 作成日時：2020年7月21日 18時
