【ＭＨＡ】最強の女だけど救けてほしい３【ヒロアカ】 (ページ10)

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……理解不能ページ10

けれど、本心ではわかっていた。私が緑谷出久で緑谷出久が私だったら、私は多分、緑谷出久を救けていた。

　ファーとモア以外の人間なんて、どうでも良かったはずなのに。

　ぎゅっと手を握ってくれる芦戸三奈に対してそうしたように、私は無意識のうちに誰かのことを〝救けたい〟と思っていた。

「ッ！」

　上鳴電気の手を振り払い、一直線に私は駆け出す。目指す先は当然幹部。ファーとモアの自由を奪った憎むべき敵。

　けれど、みんなのことを救けたいから。だから私は、ヴィランになります。

「片腕寄越してください！」

　敵の腕を思い切り掴み、捻り上げてぶん投げる。飛んで廃工場の上に飛び移り、十人の幹部をイメージで叩き潰して先を急いだ。

　が。その必要はまったくなかった。

　私は立ち止まり、目の前に姿を現した異形の男を睨み上げる。

「ファーと、モアの、敵……！」

　名前のない黒の組織のボスと対面して、抱いた感情はやはり憎しみだけだった。

「左衛門三郎、A」

「カスに呼ばれる名前なんて皆無です！！」

　瞬間、イメージで全身を刺した。

　私はずっと、豚の肉を刺して練習していた。ファーファーとファーモアが精神病院に連れていくほど、私は刺すことだけをイメージし続けていた。
　その反復練習の成果が今、目に見える形で私の努力を祝福している。

　黒の組織のボスは、全身から血を流して倒れてしまう寸前だった。

「フハハハハ〜〜！！！！強くなったねぇ、左衛門三郎A〜〜！！！！」

「――ッ？！」

　効いてない？！そんな馬鹿げたことがあっていいのですか？！

「ヒヒヒヒヒィ、地獄に落ちる時は一緒だよ〜ん！！！！昔指切りげんまんしたもんねぇ？！？！したよねぇ？！」

　何故効いていないのでしょう。奴の個性は硬化系？だとしたらまた切島鋭児郎と鉄哲徹鐵が泣――ではなく、確実に血は流れています。硬化は除外です。

「無視してんじゃないよぉA！！！！」

「かハッ」

　喉を掴まれて締め上げられた。完全に油断していましたが、反応できない速度ではなかったはずなのに。
　脳に酸素が行き届かない。このままじゃイメージしても効果は出ない。

　もしかして、私はまた……死ぬ？

「グヒァア！」

「ッ！けホッ、ゴホッゴホッ！」

　薄れる視界の中で誰かが動く。

「うちの娘に触んじゃねぇよ」

　それは、相澤消太の声だった。

→第三十三話　君の名は。