第五十話 アンナ ページ47
小さくなったファーの背中を、兄妹全員で眺めていた。ファーが縋りついている棺桶の中には、老いたモアが眠っている。
寿限無如来・ゴンザレス・阿修羅――又の名を物間Aが亡くなった。その衝撃は世界中を駆け巡り、世界中の人々がモアの死を嘆いている。
日本だけじゃなく、世界中のナンバー１ヒーローとして親しまれていたモアは家族からも愛されていた。
一人の夫と、五人の子供と、十三人の孫と、四十二人の曾孫に囲まれたモアは安らかに眠っている。死因は老衰だったのだから、モアの死は名誉なものじゃなくて理想的なものだった。
「物間、気持ちはわかるけど離れようぜ」
老いた電気が老いたファーに声をかける。私ももう、�爛▲鶚瓩覆鵑動貎余里任い蕕譴襪曚票磴�はない。けれど、ミアが私の手を握り締めているから兄妹全員は高校生の時の容姿と大差なかった。
「Aちゃん、ずっとずっとありがとな」
電気はそう声をかけ、遠くの方で自分を待つ同級生の元へと歩いていく。
私たちはそれぞれモアに別れを告げ、最後に末の私が残った。
「ファー、そろそろお別れしようよ」
ファーは泣かない。ただ無言でモアの棺桶に覆い被さっている。
「モアが天国に行けないよ」
モアは昔、二回投獄されたことがあるらしい。もしかしたら地獄かもしれないけれど、どっちにしろちゃんとしないとモアが可哀想だ。
「さよなら言って？ ファー」
アントニーも、フレッドも、爪十も、ミアも、それを待っている。全員がそれぞれの配偶者に寄り添われ、子供や孫に囲まれて待っている。
「……わかった」
しわがれたファーの声が聞こえた。落ち込んでいることが目に見えてわかるのに、この後世界中に向けたコメントを出さないといけないのは酷すぎる。
「無理しないでね、ファー」
モアと同じように、ファーももう若くない。私はファーに肩を貸し、初めて見たモアの老いた体に別れを告げた。
「…………A」
ファーが呟く。
「愛してる」
愛を囁く。
私はその様を見て、電気の方へと視線を向けた。電気はぼろぼろと涙を流し、モアとの別れを惜しんでいる。
ずっとモアを愛していたのは、ファーだけじゃない。電気だってファーと同じくらい愛していた。
「…………」
→時を戻す
→父親に寄り添う
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神村さん(プロフ) - 面白かったです！！ (2018年7月16日 16時) (
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作者名：鬼童輪廻 | 作成日時：2018年6月13日 23時
