第四十八話 爪十 ページ45
「うわああああああああん!!」
「つ、爪十くん?! ど、どうしたの?! ここ僕の家だよってあぁっ! 玄関の扉がまたまた破壊されている!?」
「いじゅくさ〜ん!」
僕は泣きながら出久さんの胸の中に飛び込んだ。
「よしよし、泣かないで〜爪十くん。大丈夫だよ、僕が来た!」
「来たのは僕です! どういう脳みそしてるんですか!」
「う、うん。そうだね。…………変なとこが物間くんに似てきたな」
「出久さん! 聞いて! モアとファーがまた僕の婚約者をストーキングして破局させたぁぁぁぁ〜!」
出久さんの服で涙を拭い、僕は小さかった頃からしてもらっていたように出久さんに優しく慰めてもらう。
「爪十くん愛されてるんだね〜」
「ナイ!! これはイジメです!! ありえなくないですか?!?! なんで僕の婚約者ばっかりケチつけるんですか?! 最低です!!」
「あぁでもAちゃんの方が似てるんだなぁ(昔は忘れてるって泣いてたのに、今は一番関心を持たれてて良かったね〜)」
「似てません!!」
言葉にしたら涙が止まらなくて出久さんの服をめちゃめちゃに汚す。けど、出久さんは生暖かい目で僕を見つめるだけだった。
「それに僕、あとちょっとで二十五なんです……!!!!」
「えっ、爪十くん、それってもしかして……」
「アントニーとフレッドみたいにモアからシナモンぶっかけられるよおおおお〜〜!!!!」
もう二十四の夏だ。誕生日までに結婚しないといけないのに、本当に好きな人は拒絶される。
『君が爪十の婚約者だって?! ははっ、ありえなさ過ぎて鼻で笑っちゃったよ! これは何かなあ?! バレちゃいけないものだよねぇ?!』(写真を差し出す)
『そ、それは?!?!』
『クソ女の浮気現場です。爪十、こんなゴミカスに与える愛は皆無です。早急に破局を命令します』
僕は五人兄妹の真ん中だから、ファーとモアから割としょっちゅう忘れられていた。そんな僕が女性を選んでも全然ダメで、だから涙が止まらない。
「大丈夫だよ、爪十くん」
「……ふぇ?」
「僕は、今でも独身だから」
「……う、うん」
「だから、シナモンくらいで泣かないで! 大丈夫! 僕が君の可能性を信じるよ!」
出久が笑った。僕は、デクみたいな宇宙一かっこいいヒーローになりたかった。
モアの事務所に所属して、そんなヒーローであると市民の方から言われても、僕はモアに認めてほしかった。
僕のモアは、厳しかった。
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神村さん(プロフ) - 面白かったです!! (2018年7月16日 16時) (レス) id: 4fd3c1de40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鬼童輪廻 | 作成日時:2018年6月13日 23時