第四十七話 ゴズフレズ ページ44
家族全員と消太おじちゃん、みんなでデンマークに行って僕たちはモアの実家へと帰る。
「モア……」
モアはぼろぼろと涙を流して、モアモアの元へと駆け寄った。棺桶で眠るモアモアは、本当にモアに似ていてとても綺麗だった。
「モアモア……」
「ゴンザレスさん……」
ファーはモアの傍に寄り添い、涙を流すモアファーのことも抱き締める。
消太おじちゃんは無言でモアファーに頭を下げ、僕たちの傍らで事態を見つめていた。
「モアモア、あんまり会えてなかったけどいい人だったよねぇ」
「ファーモアにはよく会ってたけど、モアモアはデンマークだしねぇ」
ミアとアンナが小声で話をしながら寄り添い合う。僕はボロ泣きしている爪十の背中を押してモアモアに会わせ、しかめっ面のアントニーを見上げた。
「どうする? アントニー」
「どうもしねぇ。モアモアのことなんてそんな知らねぇし」
「血も涙もないね」
「俺はそんなヒーローにはなれねぇ」
そうだ。僕たちはそんなヒーローじゃない。そんなヒーローなのはデクに憧れた爪十だけだった。
モアモア――左衛門三郎ゴンザレスの葬式を終え、寿限無如来一家にも僕たちは会う。
モアのヒーロー名の由来である、寿限無如来家とゴンザレスとモアファーの阿修羅。そんな人たちに会えて僕たちは全員自分の原点を思い出した。
「アントニー、フレッド」
寿限無如来家の親戚から声をかけられた。何事かと思い近づくと、彼らは僕らにシナモンの粉を投げつける。
「?!?!」
「ごふっ、なんですかこれ!!!!」
「諦めることを推奨します、アントニー。フレッド。デンマークでは二十五歳までに結婚しないとシナモンを投げられます」
モアは早くに立ち直って、シナモンをかける側に立ち回った。
「はあ?! んなの聞いてねぇよ!!」
「……だから早くに結婚しとけと言ったんだ」
ファーは呆れた様子で避難して、まだ二十五歳になっていない爪十とミアとアンナに忠告する。三人は身を寄せあって僕たちから距離を取り、薄情にも合掌をしてシナモンから逃れた。
「アントニー、フレッド。シナモンです。ぶっかけです。ついでに相澤消太にもぶっかけです」
「は?! おい、やめろ。やめろ!」
モアは消太おじちゃんにシナモンを投げ続け、一瞬だけ口角を上げた。
僕のモアは、悲しみを掻き消して笑顔に変えていた。
僕のモアは、誰よりも強い人だった。
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神村さん(プロフ) - 面白かったです!! (2018年7月16日 16時) (レス) id: 4fd3c1de40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鬼童輪廻 | 作成日時:2018年6月13日 23時