【ＭＨＡ】最強の女だけど救けてほしい３【ヒロアカ】 (ページ36)

今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:10,342 hit

第三十九話　左衛門三郎ページ36

日本の春に咲く桜は美しいです。そう思ってイメージで桜を咲かせるけれど、何故か微妙に違う花が咲いた。

「……君、実は桜知らないでしょ」

「……ヤー」

　隣で見ていた物間寧人に突っ込まれますが、拳藤一佳に「このままでいいよ」と褒められたので放置した。
　視線をぐるりと周囲に向けると、同級生全員が揃っている。留学生として来た私でしたが、ここまで一緒にいられるとは思っていなくて思わず笑みが零れてしまった。

「A、初めて会った時はあんなだったのにめっちゃ可愛くなったじゃん」

「可愛い？私がですか？」

「表情が全然違うもんね！口調も軟化してきたし！」

　クラスメイトの女子陣に囲まれ、最後の時を共に過ごす。

　雄英高校の卒業式。卒業するのは、もちろん私たちの学年だ。

　張り切って桜を咲かせてみてもいまいち。花束を降らせてみても不評。でも、みんな笑っています。それが嬉しくて、終わりが寂しい。

「……あ、相澤消太」

　女子陣の中から抜け出して、見送りに出てきた相澤消太の元へと駆け寄った。

「貴方と別れる日が来るなんて思いもしませんでした」

　相澤消太と初めて会った時、私はずっと彼と共に在るのだと思っていた。けれど、個性をコントロールできるようになってヒーローにもなれる資格を持った私に、もう、相澤消太という存在は要らない。

「別れろ。巣立て」

「ヤー」

　短く別れの言葉を告げた相澤消太に、私はそんな言葉しか返せない。
　この気持ちは、ファーとモアと離れ離れになっていた時に嫌というほど感じていたのに。やっぱり寂しいものは寂しくて俯いた。

「なぁなぁ！今日の集まりAちゃんも来るだろ？！」

　視線を上げ、私は迷うように視線を逸らす。今日は、少し都合が悪いです。困りました。

「えっ？！ Aちゃん来れないならやる意味ないじゃん！行こーぜ一緒に！」

「ふざけるなＡ組のアホ」

「うっせ！彼氏様はお呼びじゃねぇーよ！」

「ていうか、今日の集まりはＡ組Ｂ組合同でしょ？！カップルだけ来ないとかナシー！」

　そういう意味ではないのですが。

　次々と雄英高校の校門を跨ぐみんなの背中を眺めながら、私は自分の腹部を撫でる。最後に物間寧人が出て、私だけが足を止めた。

「A？」

　声をかけられ、全員に見られる。

「物間寧人、大事な話があります」

「え？」

　私は一歩外に出た。刹那に自分にかけていたイメージを解いた。