【ＭＨＡ】最強の女だけど救けてほしい３【ヒロアカ】 (ページ20)

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第三十五話　左衛門三郎:オリジンページ20

数ヶ月ぶりの朝日が眩しくて日陰に籠る。けれど、向こう側に見えている日向の方に行かないと刑務所からは出られなかった。

「…………」

　意を決してその場から飛び立つ。なかったことにはできない過去を背負って、未来へと歩み、私は体を強ばらせた。

「――不審者、変質太郎……？」

　出た門の反対側の道路にぽつんと立っていた不審者変質太郎は、不貞腐れたような表情をしていた。細かい表情は眩しくって見にくいけれど、不審者変質太郎であることに間違いはない。
　不審者変質太郎は長い長いため息をつき、唾を飲み込み、息を吸って

「あれれぇ？！おかしいな、刑務所に入っているはずの痴女が外に出てるぞ？！そうか今日は痴女の釈放日か！！知らなかったなぁ〜！！」

　わざとらしく高笑いをした。

「不審者変質太郎、来ていたのですか」

「なっ？！たまたまだよたまたま！」

「今は授業中のはずですが？」

「うるさいなたまたまだ！！」

　どうしても〝たまたま〟ということにしたいらしい不審者変質太郎に渋々乗って、私は「たまたまですか」と相槌を打つ。

「そうだ、たまたま……」

「ならば邂逅はここまでです。ヴィスィス、物間寧人」

　そうして瞬間移動をし、私はデンマークに帰国した。目の前には、ずっと前にファーとモアと共に過ごしていた大切なほーむがある。
　逸る気持ちを少しでも抑えて駆け出して。扉を開けて目が合ったファーとモアの名前を呼んで。抱き着いてきた二人の温もりを心から感じる。

「ファー、モア」

　大好き。涙でぐしょぐしょになった頬を三人で擦り寄せ合って、再会を永遠にでも喜んでいたい。
　けれど、二人は泣きながら私に謝った。「独りぼっちにしてごめんね」と。そんなことはないと思った。

「ナイ。ファーファーとファーモアと一緒にいたから大丈夫です。それに……」

　だって、脳裏にはこんなにもエンデヴァーに救われた後の日々が映し出されているから。

「……日本のヒーローが、いてくれました」

　そんな日々を抱き締めて、私はファーとモアに微笑む。

『だから、ヒーローがそんな簡単に諦めんなよ』

『それがヒーローだからだ』

『勝機があろうとなかろうと、絶対に勝つのがヒーローなんだよ！！』

『君一人救えないヒーローなんかになりたくないからに決まってるだろ！！！！』

　一つ一つが、魂を震わせる命の言葉だった。

「すげーんです。やべーんです」

　そんな魂を間近で見続けていた。