轟焦凍 ページ15
――明らかに、命の恩人の息子である彼だった。
それだけではない。彼はデンマーク語を勉強して、誰よりも私のことを理解しようとしてくれた。無自覚だったのでしょうが、それがとてつもなく嬉しかった。
ずっとずっと、轟焦凍がくれたものすべてが嬉しかった。
「痴女！！！！」
緑谷出久に地面に下ろされ、駆けつけてきた不審者変質太郎に抱き締められる。
「？！？！」
意味がわからなくて手足をバタバタと動かしていると、遅れて姿を現した拳藤一佳率いるＢ組生徒と目が合った。
「拳藤一佳……！」
「さえちゃん、良かった。無事だったんだ」
「拳藤一佳、不審者変質太郎が不審者変質太郎です大変です救助を要請します不審者変質太郎は壊れています今私の首筋を触りました拳藤一佳！！！！ 違います！！！！ 拳藤一佳！！！！」
「あ〜〜……ごめん、我慢してやって？ 物間さ、多分この中の誰よりもさえちゃんのこと心配してたから」
「ずっと顔面真っ青だったしな」
「食べてもすぐに戻しちゃうし」
「ストレス過多で死にかけたし」
「責任感じて下痢気味だったし」
不審者変質太郎、なんと哀れな……。緑谷出久がドン引きしています。
「痴女……」
「は、はい」
恐る恐る応答すると、不審者変質太郎は充血した瞳で私を捉えた。乾燥した唇から吐息が漏れ、元気のない金色の髪はサラサラとは言い難い。とりあえずイメージで私の知る不審者変質太郎に戻してあげると、何故だか通常よりも美形になってしまって心臓が壊れかけた。
「近いです！！」
殴ろうとするけれど体が動かない。これは、明らかに相澤消太の個性を�爛ぅ瓠璽賢瓩靴浸笋慮沈�……！
「来い」
それは、所謂お姫様抱っこだった。私の太股を直に触り、空を飛んで戦場を駆ける。
「不審者変質太郎？！？！？！？！」
ぞわっと背筋が凍ったが、不審者変質太郎の爪は一向に剥がれなかった。
それどころか、私にずっと触れているおかげで五分を経過しても私の個性の使用は可能。�狷鷭讐鶚瓩鮃酩�して、�犖淙��瓩鮃酩�した不審者変質太郎は無敵だった。
無双し過ぎて十分で黒の組織は壊滅し、誰もいなくなった廃工場の上に下ろされて姿を現した朝日を浴びる。
「ふし……物間、寧人」
泣きそうになりながら彼の名を呼んだ。物間寧人は口を開き、私を見下ろしたまま固まって真顔になる。
「君の名は。」
私の名は。
「左衛門三郎、A」
→第三十四話 朝焼けの空
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神村さん(プロフ) - 面白かったです！！ (2018年7月16日 16時) (
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作者名：鬼童輪廻 | 作成日時：2018年6月13日 23時
