第九話 私の名は。 ページ12
「なになに？！ もしかして俺に惚れちゃった？！」
「ほれ……？！」
「大変。さえちゃんがアホになっているわ」
「さえちゃん！ 俺はいつでも惚れられる準備はできてるぜー！」
ポンポンを持って顔を隠す。すると、ますます上鳴電気が調子に乗る。
「これは……時間の問題か！」
「んなわけないだろ！ さえ、あんたしっかりしな！ こんな奴に惚れたら詰むよ？！」
耳郎響香に肩を揺さぶられるけれど、そういう気持ちがあるなんてあり得ない。
「惚れていません」
ポンポンを離して断言すると、上鳴電気のあほ毛がしゅんと下がってしまった。
「ドンマイ」
「うるせー！」
ぎゃあぎゃあと騒がしい彼から迅速に距離を取り、私はとぼとぼと観客席沿いに歩く。
「あっ、痴女！！」
すると、入場門から金髪碧眼のあの時の男――
「不審者変質太郎」
――またの名を不審者変質太郎が姿を現した。
「何があったらそんな呼び名が出てくるんだ！？」
不審者変質太郎の背後にいたＢ組生徒の突っ込みを無視し、不審者変質太郎は唇を結んでじっと私のことを見つめる。
「…………あの時は……」
「？」
「あの時はよくも僕のことを傷つけてくれぴぎゃあ！！」
「Ａ組とはいえ転校生に絡むのはさすがにダメだろ」
不審者変質太郎の首を手刀で仕留め、倒れた彼を少女が掴む。
「ごめんな」
「ナイ」
俯くと、少女は不審者変質太郎をずるずると引きずりながら去っていく。
「停止してください！」
私はそのまま帰したくなくて、彼女たちの目の前に立ち塞がった。
「えっ？ ど、どうしたの？」
「名前、は……なんでしょうか」
ちらりと不審者変質太郎に視線を向けると、少女は「あぁ」と安心したような笑みを浮かべた。
「こいつは物間寧人。ちなみに私は拳藤一佳。よろしくね？」
「……寿限無如来・ゴンザレス・阿修羅です。あだ名はさえちゃんです」
「そっか。じゃあまた、さえちゃん」
ひらひらと手を振った拳藤一佳に手を振り返し、私は知らず知らずのうちに息を吐く。
「寿限無如来」
「なんでしょう、相澤消太」
「お前いつまでその辺ふらふらしてんだ」
「申し訳ありませんでした」
首根っこを掴まれたまま相澤消太に引きずられる。これは……拳藤一佳に引きずられる物間寧人のようだ。
『つーかなんだその格好』
『貴方の指示です』
『は？！？！』
『貴方の指示です』
後に、上鳴電気と峰田実は相澤消太に縛られた。
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ｍ - 名前がｗ (2018年12月30日 15時) (
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作者名：鬼童輪廻 | 作成日時：2018年5月22日 15時
