第四話 ページ4
「タイガくんが見ていた動画、ちゃんと見ました！ Aさんもカヅキさんもすっごくかっこ良くて、ダンスもすごくて、ジャンプもすごくて、すっごくキラキラしてて！ こんなにすごい人たちが身近にいてくれるってすごいな〜って思ったんです！ だから、その……泣かないでほしいな〜って……あっ！ Aさんのプリズムショー、今度はいつ見れますか？！」
ユキとの会話が脳裏を過ぎる。振り返ると、シンが輝いた笑顔のままに階上から私のことを見下ろしていた。
「……もう二度と見れないよ」
ちゃんと言うって言ったから、ちゃんと言わなきゃ。ちゃんと言わずに適当に流していたせいで、タイガのことを必要以上に深く傷つけてしまったから。
「えっ」
「私、怪我したの。アスリートには致命的なほどの大怪我で、もう二度とプリズムショーをしてはいけないって医者から言われた」
「そんな……」
「シンには心の煌めきがあればって言ったけど、私にはもうそれさえない。だからシン、シンには私の分も飛んでほしい」
シンも傷ついたようだった。だけどタイガほどではないと信じて、その瞳に違和感を覚える。
「ッ！」
何かが違う気がした。シン自身が傷ついたんじゃないような気がして、私のことを想って傷ついたようなそんな傷つき方だった。
「はいっ！」
なのにシンははっきりとそう返事をして、背筋を伸ばす。純粋無垢で、素直で、芯がある。そんな子だったとは知らなくて、目を見開いた私は思わず笑みを零してちょっとだけ泣いた。
コウジは「消せ」って言うけれど、カヅキが「お前のもの」って言ってくれたからまだ消さない。シンがあの中にいる私を見つけてくれたから、絶対に消さない。
お金にならなくても、そこにある限り誰かがまた私のことを見つけてくれる。誰にも見てもらえなかったあの頃の自分を記憶の中に刻んでくれるなら、消す必要なんてない。
「ありがと」
思わず言葉が出てきた。
シンはその「ありがとう」の意味がよくわからなかったのか、首を傾げていた。
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作者名：鬼童輪廻 | 作成日時：2018年5月18日 15時
