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走って逃げる ページ23
耐え切れなかった。一分でも一秒でも長くこの場にいたくなかった。
右か左かもわからなくなるほどに世界が歪んでいる。呼吸が上手くできなくなる。
やだ。助けて。誰か。助けて――。
「Aさん！」
シンの声が私のことを呼び止める。けれど、どこから聞こえてきたのかもわからなくて混乱する。
「あ、あ、あ、あ……！ ああああああああ！！！！」
無理。もう。無理……。
「Aさん！ そっちは危ないです！ 行かないで――」
「……助けて」
全身に有り得ないほどの衝撃が走った。体が捻じ曲がって、固くて痛いコンクリートの上をボールのように転がっていく。
「Aさぁぁぁぁん！！！！」
トラックに轢かれた私は電柱らしきものに体をぶつけて停止した。ひしゃげた体を、シンが抱き締めることもないまま私の意識はここで途切れた。
シンと、通行人の悲鳴が私に送られた鎮魂曲だった。
END
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作者名：鬼童輪廻 | 作成日時：2018年5月18日 15時
