【KING OF PRISM】伝説の女だけど放っておいてほしい√ユキノジョウ (ページ47)

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最終話　ドラマチックLOVE ページ47

みんなで寮に帰った後、私はステージの余韻に浸る為に中庭のベンチに座っていた。夜中の時間帯はとても静かで、微風が体を癒していく。
　疲れて眠ってしまいそうになるけれど、適度な冷気が私をまだ〝今日〟に留めていた。

(ずっと〝今日〟だったらいいのに)

　そうしたら、この気持ちを保ったまま〝彼〟を想える。明日になったら消えてしまいそうな感情に戸惑う臆病な自分が嫌になるけれど、告げたいとも思わないからもう少しこのままでいたい。

「A」

「ッ？！」

　振り返ると、ユキが近くまで来ていた。

「隣に座っていいだろうか」

　頷くことしかできなくて隙間を開けると、ユキは無言でそこに座った。近い。……死ぬほど近い。

「今日のショー、見れて良かった」

「そ」

「ずっと、見れないと思っていたからな」

　ユキは、私の足を心配している方だった。たまに本気で忘れているユウみたいな子もいるけれど、彼はタイガの次くらいには私のショーを生で見たかったのだろう。

「その、ジャンプのことなんだが……」

　迷うようにユキが漏らす。

「途中から新しいジャンプばかりだったな。ブランクがあるのに八連続飛んで、同い年なのに敵う要素が見当たらない……」

　私は本当に今回で終わり。でも、ユキはこれからだ。そんなに自虐気味になる必要はない。……なのに私は言葉に出せなかった。照れくさくて俯いてしまった。

「……いや、本当に言いたいのは最後のジャンプだ」

「！」

「俺は、Aのことを愛している」

　何を言われるのかと身構えて、私の警戒心をユキが言葉で溶かしていく。

「…………」

　ゆっくりと視線を上げると、隣に居たユキの表情は月明かりに照らされていてよく見えた。だから多分、私の表情も真夜中だからと言って誤魔化されない。

「…………好き」

　コウジのことが好きだと知られていて、ヒロのことが好きだと誤解されていて、そのまま〝彼〟に「好き」って言ったら軽蔑されると思っていた。

　ぽろぽろと涙が零れてきて、ユキにゆっくりと親指で拭われる。

「…………好き」

　十六夜の月明かりに照らされたユキが眩しい。

「……出逢ってくれて、ありがとう」

　ジャンプでは私から接吻をした。今度は、ユキから唇を重ねて愛してくれた。

END