【KING OF PRISM】伝説の女だけど放っておいてほしい√ユキノジョウ (ページ13)

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第四話ページ13

「あれぇ？雨が降ってきましたね」

「そうだね」

　適当に相槌を打ったけれど、レオは会話をやめる気がないのか話を続ける。

「ユキ様、傘持っていたのでしょうか……？」

「……？ユキ？」

　確かに朝は晴れていたし、歌舞伎の稽古場に傘を持っていかなかった可能性は高い。

「……向こうで傘を借りるんじゃ？」

「うぅ……そうかもしれませんが心配ですぅ〜！私、見に行ってきます！」

「待って。それなら私が行く」

「え？ Aちゃんが？」

　雨が降るとは思わなかったけれど、ちょうど外に出る用があったし。

「そういうことなら……お願いします、Aちゃん！」

「うん」

　頷き、私は傘を差して外に出た。ユキ用に持っていく傘は重く、男用ではなくビニール傘にすれば良かったと後悔する。
　電車を乗り継いでなんとか辿り着けたのはいいけれど、私は〝彼〟を見て体を強ばらせた。

「ッ！ A！」

「……？ユキノジョウ、こちらの女性は？」

　テレビで時々見かけるユキの父親――菊右衛門は、怪訝そうに私を見る。ユキは慌てた様子で何かを否定し、「寮の用務員の方です」と説明した。

「……初めまして、羅生門Aです」

「……初めまして、ユキノジョウの父の菊右衛門です」

　菊右衛門は一応そう挨拶したけれど、なんとなく不服そうな表情だった。どうせ、「まだ若いのに」とかそんなことを思っているのだろう。こういうのは、今まで何度も言われたから慣れている。

「傘、持ってきたから」

　用件を手短に伝えてユキへと傘を差し出した。ユキは戸惑いつつも礼を言って、私の手から傘を受け取る。

「……父上、私はこれで失礼致します」

　そのまま深く頭を下げ、「行こう」と声をかけられた。私は頷き、ユキの歩幅に合わせて歩き出す。

「傘、すまなかったな」

「元から外に出るつもりだったから」

　手短に答え、私は足を止めた。

→そういうことだから、先に帰ってて
→…………
→ついてきてくれる？