【KING OF PRISM】伝説の女だけど放っておいてほしい√ユキノジョウ (ページ49)

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最終話　アゲハ蝶、夢舞い恋しぐれ:β ページ49

目が覚めた時、私の足はもう二度と動かないと直感で悟った。そうして何故か安堵して、自分が優柔不断だったことに気づく。
　中途半端に足が動いてしまうから、私はエーデルローズの為に〝何か〟がしたいと思ってしまった。そうして出逢ってしまった〝彼〟の運命を、こんな風に捻じ曲げてしまうとは思いもしなかった。

「A」

　もう二度と〝何者〟にもなれない私から離れてほしくて、愛おしそうに私の頬を撫でるユキを無視する。
　そうしていたら、医者でさえ私のことを〝そういう病気〟だと診断した。

　退院して何処に行くのかと思ったら、寮を出たユキにユキの実家へと連れてこられた。ユキは自分の両親に、「将来を誓い合った人」と紹介して私をここに住まわせた。

　隙を見つけては車椅子を押して何処かに連れて行ってくれるユキ。そんな彼の思惑が理解できなくて私はさらに突き放してしまう。

　ユキは、決定的な言葉を一度も言わなかったのだ。「好きだ」とも、「愛している」とも言わずに私との将来を語っている彼のことが可哀想で可哀想で仕方がなかった。

　ユキは私を縛っている。
　私もユキを縛っている。

　歪に絡まって解けなくなった私たちの関係が、ゆっくりと地獄に落ちていくのを私は密かに感じていた。

　私がユキに望むことはただ一つ。本当に好きな人を見つけて、その人と幸せになってほしい。
　私という過去の存在なんて、学生時代に出逢った私という存在なんて、どう考えても重みでしかない。

　なのにユキは、責任というものを感じているのだろう。あの日ユキに背中を押してほしかった私の我儘を、自分のせいだと自責しているのだろう。

　いつしか太刀花家の人間が全員外出する時を待つようになった。その機会が訪れた時、私は車椅子を押して移動する。

　〝人は、１５ｃｍで充分なのだ〟。

　私は中庭にある池へと体を投げ出し、水に生きる術を奪われる。足は動かない。手に力は入らない。

　これから「死にたくない」と強く思っても、私は絶対に助からない。なのに笑みが零れていた。これでユキのことを幸せにできると思った。

　私は永遠に、彼の幸せを願い続けている。

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