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感情を噛み締める ページ43

何時も通り彼の車に乗って帰ってきて、何時も通り靴を脱いでソファーに座る。
何ともないと思っていた腕。それだけは私の予想に反して全くと言っていいほど使い物にならなくなっていた。
曲げることは勿論、指を動かすにも痛みが出る。
これじゃあ何も出来ない。

中也「何か食うか?」

貴方「うん。……やっぱり腕痛い」

中也「そりゃ、腕だったから死ななかったものの、あの距離で撃たれれば痛みも傷も酷いに決まってんだろ」

着替えを済ませて台所に立つ中也。
普段こんな傷を沢山見てるからわかるんだろう。

貴方「痕残っちゃうかな」

中也「まぁ目立たないくらいには残るんじゃねぇか?」

貴方「やだなぁ……」

唯でさえ中也に見合う様な見た目も生き方もしてないのにこれ以上傷痕が増えたら彼にどう思われるか……。

中也「今余計な事考えてただろ」

いつの間にか私の目の前まで来ていた彼は小さく息を吐いて聞いた。

貴方「え、いや、別に」

中也「お前が何か悩む時は決まって尻尾触ってんだよ。どうした?」

貴方「……見た目も生き方も中也に見合わないのにこれ以上傷が増えたらって」

中也「見合わないなんて言ったことあるか?俺はお前が好きだ。見た目も表情も声も全部。傷が増えたって気にしねぇよ。俺だって傷くらいある」

彼に傷……。
今まで考えたことなかった。
彼は強い。だからそんなものない様な気がしていた。

中也「それに、腕の傷より首にある傷痕の方が目立つだろ」

彼のしているのと同じ形のチョーカーを外す彼の白い手。

貴方「嫌。見ないで」

中也「見た事あるだろ」

咄嗟に手で隠すも彼の手に捕まって離されてしまう。
やっぱりまだ怖いから見てほしくないのに。

貴方「でも、まだ怖いの」

真っ直ぐ私を見る透き通った目。
それに見惚れていると彼は首の傷痕にキスを落とした。

貴方「えっ……」

中也「隠すなよ。傷痕だろうが何だろうがお前の一部なら俺が全部愛してやる」

小さく首元で呟かれた言葉は暖かくて自然と涙が出た。
彼の髪に触れてうん、と返事をすれば優しく笑う声が聞こえた。
この涙は何だろう。
私の困惑を他所に流れ続ける涙。
何時もみたいに抱き寄せてくれる彼の手の温度、息遣い、匂い。

嗚呼、わかった。
嬉しいんだ。
もっと彼に甘えたいんだ。


これは、幸せだ。

________________________
こちらよろしくお願いします。
続編に関しまして

彼の事→←最適解



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紅野(プロフ) - ソリバさん» いつもありがとうございます…!続編になりそうな気もしますが、もう少し考えてみますね。 (2017年11月7日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
ソリバ(プロフ) - いつも楽しみにしてます!できれば続編お願いします!! (2017年11月7日 14時) (レス) id: c80ce2fe4d (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - ニャン将さん» ありがとうございます!もう少し検討させてもらいますね…! (2017年11月6日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 埃さん» いい作品だなんてありがとうございます…!何ででしょう… (2017年11月6日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
ニャン将(プロフ) - 続編希望します!! (2017年11月6日 18時) (レス) id: a5f5e3b412 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2017年9月2日 16時

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