『彼女』に会った話 ページ44
ある日の事。
何時もは一緒に家に帰るのに偶々太宰さんは仕事でもう少し残らなければならなくなった。
貴方「じゃあ先に帰ってるね」
太宰「一人で大丈夫?敦くんでもつける?」
貴方「ううん。これもあるし」
これとは元は太宰さんにつけられていた盗聴器である。
今はもう知ってしまったから発信のみのレシーバーみたいな感じだ。
生憎僕は携帯を持っていない。
これもきっと太宰さんの独占欲の一つなんだと思う。
まぁなくても困らないし、少ないお金をそんな風に使ってもらうのは申し訳ないから僕も遠慮してる。
太宰「なら何かあったら大声出す事、良いね?」
貴方「わかってる。ちゃんと仕事してよ?」
太宰「するよ。君に寂しい思いさせたくないからね」
挨拶をして社を出ると空はすっかり暗くなり始めていた。
吸血鬼の時間。
だから僕にとっては見慣れた空の色。
夕飯どうしようかななんて考えながら橋を渡っていると向かいから来た女の子がどしゃっと盛大に転んだ。
その姿が何だか少し前の僕みたいだった。
「大丈夫…?」
手を差し出すとその子はゆっくりと僕を見た。
綺麗な目、髪。
赤みたいな黒みたいな不思議な色。
可愛い子だな。全体的にふわふわしてるというか。すっと上がった目尻が狐を思わせる。
「大丈夫、です。ありがとうございます」
手をそっと掴んで立ち上がるその子を見てよかった、と声が出た。
「あ、あの……」
彼女は僕の手を少しきゅっと握って言った。
そんな姿に頑張れなんて思った。
「私人を探してて、その、えっと……」
貴方「誰?僕が知ってる人なら教えてあげられる」
今まで泣きそうだった目が光を戻した気がした。
もしかしたらこの子も僕と同じで人が怖かったのかもしれない。
「太宰って人を探してます……」
貴方「太宰治?」
これは意外だったな。
真逆太宰さんを探してるなんて。
「知ってるの……?」
貴方「知ってる。ここにいればもう時期来るよ」
「……え?」
貴方「じゃあね、僕帰って夕飯の支度しなきゃいけないから」
戸惑う彼女を残して今日は太宰さんの帰りが遅くなるなと感じながらポケットから例の盗聴器だった物を出した。
貴方「太宰さん、聞いてたでしょ?待ってる人がいるよ。帰り道の途中の橋の上。綺麗な髪の女の子。助けてあげて。僕は待ってれるから」
太宰さんは僕の頼みなら断らない。
きっと今頃困った様に笑ってると思う。
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紅野(プロフ) - まんじゅうねこさん» ありがとうございます!ゆっくりですが頑張ります! (2018年10月21日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
まんじゅうねこ(プロフ) - 続編移行おめでとうございます!!!此れからも頑張って下さい!!!応援させていただきます!!! (2018年10月20日 22時) (レス) id: 5748b81071 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅野 | 作成日時:2018年10月19日 21時