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白い紙と子供の迷路 ページ40

暗い室内。
また夜中に起きちゃった。
なんて思っていると髪を梳くように触れる手の感触がした。

貴方「太宰さん…?寝てないの?」

視界がはっきりしないまま目を向けると彼は手を止めた。
僕の目を見たまま暫く黙っていた。

太宰「……あぁ、うん。眠れなくてね」

貴方「考え事?」

太宰「ちょっと違うかな。……無意識に色んな事を考えてしまうんだ。って言ってもわからないだろう?」

貴方「わかんない。…何考えてるの?」

太宰「……Aの事」

貴方「僕?太宰さんてばいっつも僕の事考えてる」

太宰「寧ろ良いのかい?君以外の事考えても」

悪戯っぽい声色。
普段探偵社にいる時彼が発する声。
こういう時は大抵本気じゃない。
国木田さんが騙されてるの何回も見てるからわかる。

貴方「良いけど、女の人の事考えるのは嫌だよ」

太宰「そうだろう?まぁ、君より綺麗な人は見た事ないのだけれどね」

ほら、本気じゃない。
彼なりの冗談。揶揄い。そんな所だ。
不意にぎゅぅと抱き寄せられた。

貴方「なぁに?まだ眠れそうにない?」

太宰「ううん。君の声を聞いていると安心する」

少し手を伸ばして何時も彼が僕にするみたいに頭を撫でる。
僕はそうされるともっと安心するし、もっと愛されてるって感じるから。
暫く何も言わずに続けていると少しずつ太宰さんの腕の力が抜けてきた。

貴方「太宰さん…?寝ちゃった…?」

太宰「……眠れそう」

貴方「そっか。良かった。……おやすみ」

太宰「うん。おやすみ」

こんなに眠そうな声聞いた事ないな。
水飴みたいな簡単には流れていかない声色。
本当、太宰さんって知れば知るほど不思議な人。
解明されない。
どんどん募っていく。
でもその答えは意外と簡単で、手の届く所にある。
彼は隠すのが上手いからわかんないなんて感じるけれど、気長に待てばわかる。
太宰さんは子供の書いた迷路なのだ。
出口が幾つもあったり、或いは全て行き止まりだったり、よくわからない道があったり、大きすぎたり。
だから彼には僕みたいなのが必要なんだ。
白紙みたいな僕が。
僕が無で何もないから、太宰さんはそこに本当の愛や甘え方や楽しみを作り上げてくれる。
書く紙がないと意味のないインクと、書かれなければ意味のない白紙。
僕らそっくりだ。両方なくちゃお互いが困る依存関係。

貴方「…ずっと僕を依存させてね」

もう寝てしまった彼に小さく囁いて僕もまた目を閉じた。

誰かの何か→←借り物が脳を支配する



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設定タグ:文スト , 太宰治 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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紅野(プロフ) - まんじゅうねこさん» ありがとうございます!ゆっくりですが頑張ります! (2018年10月21日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
まんじゅうねこ(プロフ) - 続編移行おめでとうございます!!!此れからも頑張って下さい!!!応援させていただきます!!! (2018年10月20日 22時) (レス) id: 5748b81071 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2018年10月19日 21時

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