誰も知らなかった事 ページ23
太宰side
家を出て彼についてAの居る家を目指す。
車を使うと音でバレてしまうかもしれないから徒歩だ。
「姉さんがあなたに執着する理由がわかりました。あなたは姉さんを本当に大切に思ってる。それがきっと姉さんには初めての事だったんだ」
太宰「そうだろうね。……一つ、聞いてもいいかな」
「何でしょう」
太宰「血の味は人によって違うものなのかい?」
「いえ、全部同じです。味なんてほぼありません。水みたいな感覚です」
太宰「……おかしいな」
「おかしい?」
太宰「君の姉さんはね、血は美味しくないと言っていたんだ。それに私の血が甘いとも言っていた」
私の血は甘い美味しいと彼女は常に言っていた。
それにきっと私の血がそんな味じゃなければ彼女はとっくに死んでいるだろう。
隣を歩く彼ははっと顔を上げて納得した様に頷いた。
「……そうか。姉さんは家で絶対に血を飲まなかった。あなたの血以外が嫌なんだと思っていたけどそうじゃない。姉さんは珍しい吸血鬼なんだ」
太宰「何だい、それ」
「相手の情を味として認識できる吸血鬼。殆ど例はありません。数少ないその吸血鬼達は血が不足して死んでいったそうです。姉さんも今まさにそうなりつつある」
太宰「させないよ。そんな事絶対に。因みにどんな味がどんな情かはわからないのかい?」
そう聞くと彼は少し眉を下げてわかりません、と言った。
本当に彼女だけの感覚らしい。
「あ、ただ此れには載ってるかもしれません」
鞄から一冊の単行本を出し、私に差し出した。
日焼けしてはいるものの本自体は綺麗だ。
大事に保管していたのだろう。
太宰「…これは、本?」
「吸血鬼の生態について書かれている書籍です。僕にはもう必要ないので差し上げます。姉さんの事で困った事があったら見てください。大体の事は載ってますから」
太宰「いいのかい、本当に貰っても」
「僕が持ってるよりあなたが持っていた方が良い。これをあなたに渡す事で姉さんが生きやすくなるなら安いもんです」
太宰「君は良い子だね。わかった。貰っておくよ」
あの親、と言うのは良くないかもしれないけれど、彼らの子どもとは思えないくらいにこの子は優しい。他人思いだ。いや、単にAが姉だからだろうか。
「もうすぐ着きます。きっと両親は寝ているので出来るだけ物音を立てないようにしてください」
太宰「わかってるさ」
そんな事よりAが心配だ。
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紅野(プロフ) - まんじゅうねこさん» ありがとうございます!ゆっくりですが頑張ります! (2018年10月21日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
まんじゅうねこ(プロフ) - 続編移行おめでとうございます!!!此れからも頑張って下さい!!!応援させていただきます!!! (2018年10月20日 22時) (レス) id: 5748b81071 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅野 | 作成日時:2018年10月19日 21時