言わないで×16 ページ18
太宰に手を引かれ逃げた先で私はただ黙って寝ているだけだった。
無に身も心も支配されていた。
どう生きていいのかわからない。
そんな日々が数える事もせずに淡々と流れていく。
織田さんに会いたい。
もう一緒に居るのが太宰だとか何処にいるとか逃げたとかどうでもよかった。
何も要らない。
ただ、織田さんに会いたい。
太宰「また泣いてるの。……そんなに織田作の存在が大きかったのだね」
太宰は私が寝ている布団の傍まで来てそのまま流していた涙を指で掬った。
貴方「織田さんは……家族だって。言ってくれた。お兄ちゃんがいなくなった後のたった一人の家族……」
太宰「じゃあ、次は私がAの家族になるよ」
貴方「……」
一度私を捨てた彼にそんな事言われたくなかった。
どうせまた置いて行くんでしょ?
一人は嫌。
簡単に一緒にとか言わないで。
太宰「織田作がね言っていたのだよ。まだ私達が三人でよく飲んでいた時にね。君の事を幸せにしてほしいって」
貴方「そんなに前から……」
太宰「君に幸せになってほしいんだって。任されちゃったんだ。君の事」
貴方「幸せ……」
幸せというものがどんなものか、今はそれすらもわからない程になってしまった。
いや、そもそもそんなもの知っていたのかな……。
太宰「ねぇ、A、私ちゃんと幸せにするよ。もう君の前から居なくなったりしない。ちゃんと今度は恋人として傍にいたい。…付き合って呉れないかな」
私の手を握って真っ直ぐに目を覗き込む。
その姿は何だか知らない人みたいだった。
太宰「仕事も見つけたし、君を一人にしない覚悟も出来た。本気で大切にするし、本気で愛すから。ね?」
そう言う彼の目には今までにはない真剣さがあった。
何時もなら何を考えているのかわからない目も今なら澄んで見える。
それくらい本気って事なのかな。
貴方「絶対、一人にしない……?」
太宰「しないよ」
貴方「嘘言わない?」
太宰「言わない」
貴方「置いて行かない?」
太宰「安心して。もう二度と置いて行かない。君が望むなら何でもする。だから君も私の傍にいてくれないかい?」
貴方「……今言ったことに嘘がないなら」
太宰「本当……!」
貴方「もう耐えられないよ。こんなに辛いの。誰でもいいから心に空いた穴を埋めてほしいの」
でもその穴を埋めるって事がその人から離れられなくなるって事でもあるって今になって気づいた。
もう遅いけど。
まぁ別に悪かったと思ってないし、いいや。
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アミ - この作品、すごく面白かったです!!更新頑張ってください! (2020年4月8日 11時) (レス) id: 808cf034c3 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - モクズノドウケシさん» ありがとうございます…!掛け持ちしてるせいで更新かなり遅くなってしまいましたがここからまた頑張ります! (2019年1月5日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
モクズノドウケシ(プロフ) - 織田さんの出した最後の正しい道……。感極まります……、続きだ。嬉しい。更新頑張って下さいね! (2019年1月5日 13時) (レス) id: fd101bcda6 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - ジブリールさん» ありがとうございます!ゆっくり更新ですが頑張ります…! (2017年12月27日 13時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
ジブリール - 続きが凄い気になります!更新待ってますね! (2017年12月24日 22時) (レス) id: 41cfeef620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅野 | 作成日時:2017年10月8日 22時