言わないで×３ ページ3
ある日ビルの中を散歩程度に歩いていた時。
向かい側から何やら騒ぐ二人組が見えた。
…あの髪色は中也？
近づくに連れてその疑問は確信に変わった。
あの隣にいるのはお兄ちゃんだ。
嬉しかった。
何年も会えなかったから姿を見るだけで頬が緩んだ。
でもどんどん近くに来る彼の目に昔の様な優しさはなかった。
知らない人みたいだった。
嘘…。お兄ちゃんだよね…？
ぼーっと記憶と照らし合わせをしていて目の前まで来ていた彼らに気づかなかった。
「ねぇ、そんな所でぼーっとされてても邪魔なのだけれど」
貴方「えっ…」
お兄ちゃんだ。
この声は絶対にそうだ。
心持ち低くなったその声が紡いだ言葉は、昔の彼にあった優しさがなかった。
笑わない目。
怖かった。あんなに優しく微笑んだ彼は何処に行ったの…？
私のお兄ちゃんは何処…？
この人は誰…？
「聞いてるの？何処のお嬢さんか知らないけど、道の真ん中でボケっとしてたら人の迷惑になるって親に教わらなかったの？」
「おい太宰そこまで言わなくたって…！」
貴方「……すみません」
俯いて道を譲る。
遠ざかって行く足音と声。
昔のお兄ちゃんはもういないんだ…。
探し求めていたのは私だけで、お兄ちゃんは、否、"太宰治"は私の事なんて忘れてしまったのだ。
部屋に戻って泣いた。
悲しかった。苦しかった。
今思うとこの頃の私は無意識に太宰に恋をしてたんだと思う。
きっとこの悲しみや苦しみは失恋から来るもの。
気づいてなかっただけで、彼の事を兄としてではなく、人間として好きだった。愛していた。
だからそんな彼に愛されたかった。
死んでしまいたかった。
まだ忘れたと言われた方が良かった。
知らないではなく、忘れたと言われたかった。
その日から部屋を出るのはやめた。
極力部屋から出ないようにした。
森さんは私を心配して部屋に構成員を数名、日替わりで置いた。
何も嬉しくなかった。
空っぽになってしまったみたいだった。
構成員達は私を放って無駄話をする人達もいた。
その会話の半分が太宰は頭の回転が早い、相手にしたら死ぬという話や中也に勝る者はいないのではという話だった。
拷問だった。私が何をしたっていうの。
もう私の愛した人達の話はしないで。
そんな日々が続いてふと胸に宿った感情は憎悪だった。
私も褒められたい。どうして彼らしか見てくれないの。二人に出来るなら私だって出来るよ。
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アミ - この作品、すごく面白かったです!!更新頑張ってください! (2020年4月8日 11時) (
レス) id: 808cf034c3 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - モクズノドウケシさん» ありがとうございます…！掛け持ちしてるせいで更新かなり遅くなってしまいましたがここからまた頑張ります！ (2019年1月5日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
モクズノドウケシ(プロフ) - 織田さんの出した最後の正しい道……。感極まります……、続きだ。嬉しい。更新頑張って下さいね！ (2019年1月5日 13時) (レス) id: fd101bcda6 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - ｼﾞﾌﾞﾘｰﾙさん» ありがとうございます！ゆっくり更新ですが頑張ります…！ (2017年12月27日 13時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
ｼﾞﾌﾞﾘｰﾙ - 続きが凄い気になります！更新待ってますね！ (2017年12月24日 22時) (レス) id: 41cfeef620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅野 | 作成日時：2017年10月8日 22時
