検索窓
今日:1 hit、昨日:32 hit、合計:375,225 hit

三言目 ページ5

最悪だ。
彼の執務室に着くまで数回床に段ボールを叩きつけ、中身をばら撒いた。端の方はもう凹んで丸くなってしまった。
部屋の前で落としたのが可愛く見える。
それだけでもかなり気分が沈んでいるのに、彼の部屋の前に着くと先刻樋口ちゃんに問われ気づいてしまった告白をされてもいないし、してもいない事件を思い出して彼にそういう風に見られていないのではと物凄く不安になった。
お陰でもう何もしたくないくらいに気分が沈んでる。
今探偵社の包帯野郎に心中頼まれたら一緒に死ねると思う。
私だって彼奴程じゃないけど昔、死を欲していた時期があった。だから彼奴の気持ちがわからないでもないし、気分が最高に沈むと今みたいに死にたくなる。
泣けば落ち着く時もあるけど、最近は全くだ。

ノックをしてドアを開ける。
紙の束が置いてある机に向かって座っている彼に資料を渡す。

貴方「朝言ってたやつ、持ってきた」

中也「あぁ、助かる」

貴方「それじゃ」

ドアノブに手をかけると後ろからおい、と彼に呼び止められた。
振り向いたら泣いてしまいそうな気がした。

貴方「……何」

中也「どうした」

貴方「なんでもない」

中也「……そうか」

きっと彼は気づいてたと思う。
私が今死にたいと思ってる事もそれを知られたくないって事も。
……姐さんに聞いてもらおうかな。
一人で抱え込むより軽くなるだろうから。
また段ボール二つを持って今度は姐さんの部屋に向かった。


畳の匂い。
姐さんの部屋にだけある独特な雰囲気。

紅葉「なんじゃ。相談というのは」

貴方「色々」

紅葉「その色々を聞いておるのじゃ」

貴方「……今凄く死にたいの。不安で。消えてなくなりたい」

紅葉「不安の原因は分かっておるのかえ?」

貴方「……中也だと思う」

紅葉「中也?」

少し眉を顰めた姐さんは態々私にお茶を淹れてくれた。

貴方「……実は私の思い違いなんじゃないかって。告白してもいないし、されてもいない。だから本当はそんな関係じゃないのかもって」

紅葉「言葉が全てだと思うならそれは間違いと私は思うがのぅ」

偶に姐さんは難しい事を言う。
首領とか太宰とかとは違う難しさ。

貴方「どういうこと?」

紅葉「考えすぎじゃ」

そう言って姐さんは何時も通り笑った。
どう考えたらそう思えるのか……。
でも姐さんが笑ってるってことは本当に考え過ぎなのかもしれない。

四言目→←二言目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (259 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
637人がお気に入り
設定タグ:文スト , 中原中也 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

紅野(プロフ) - お白湯さん» コメントありがとうございます。やっぱり同じになる人多いですよね。いつも名字つけようか迷ってつけるのですが読む人にとったらどうなんでしょうか……。 (2019年1月13日 22時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
お白湯 - 夢主ちゃんの名字が、私の本名の名字と読み方違うだけでびっくりしました(笑) (2019年1月13日 1時) (レス) id: fa6e0c5cd0 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 聖宮さん» ありがとうございます!頑張って書こうと思います! (2018年10月1日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
聖宮(プロフ) - 寧ろ書いて欲しいです、続編楽しみに待ってます! (2018年10月1日 20時) (レス) id: 956436ae5b (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 月詞さん» ありがとうございます!いつもゆっくり更新ですが頑張りますね! (2018年9月28日 19時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:紅野 | 作成日時:2018年4月15日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。